「今は物流面でも人的移動の面でもスピードが求められている。このため、空港やその近郊にオフィス、ホテル、ショッピング、エンターテインメント、国際会議、住居などの施設が揃うと効率がいい」。MIPIM(ミピム)のパネルディスカッション「Airport Areas as Economic Engine」に出席した、米ノースカロライナ大学の特別教授、John Kasarda氏は指摘する。

 2030年には世界の年間航空旅客数が現在の3倍にあたる130億人を越え、物流も現在の3倍になることが予想されている。このトレンドを背景に、パリやアムステルダム、ダラス、仁川などの空港近郊で「エアポートシティ」の開発が進む。効率的な都市開発が行える上、渋滞もなく不動産価格も安い。一部では、都心部よりも賃料が高いエリアも出現しているという。

 今年、優れた開発プロジェクトを表彰するMIPIMアワードで「ベスト・オフィス開発」部門を受賞した、ドイツのThe SQAIRE(ザ・スクエア)は、こうしたエアポートシティの最先端を体現している。同ビルは、フランクフルト空港の鉄道駅上に竣工した大型複合施設。ルフトハンザ、KPMGなどが入居するオフィスフロアを中心にホテル、国際会議場、ショッピングモールなどを併設。それまで旅の通過点に過ぎなかった空港に、1日7000人が滞在する一つの街を作り上げた。建物の規模は地上9階建て、賃貸可能床面積14万m2。660mに上る全長はエッフェル塔を横倒しに二つ並べた分にあたる。

 「エアロトロポリス」と名付けた都市構想に基づき、空港を中心とした街作りの研究を行っているKasarda教授は、「今後の課題は、エアポートシティを自然発生的にではなく、今後の発展を見込んで各都市の開発計画の中にうまく取り組んでいくことだ」と会議を結んだ。

篠田 香子=フリーライター,本間 純