年に一度、世界トップレベルのプロフェッショナルが集結するMIPIM(ミピム)は、常に不動産業界の景気バロメーターとして機能してきた。2009年に初参加した際に感じた沈鬱な空気はなく、景況感が回を重ねるごとに薄紙をはがすように回復しているのを実感する。

 開会を迎えた3月12日(日本時間13日)火曜日、いくつかのパネルセッションやファンドマネジャーたちとの雑談で聞いた限りでは、昨年までのように差し押さえや倒産という言葉を耳にする機会はほとんどなくなった。コンファレンスのプログラムを開けば、ローンの調達やディストレスト投資といった内容よりも、サステナビリティや新興国投資などの前向きなテーマが目に付く。投資ムードの回復の様子は、大手不動産会社が現地カンヌで発表した最新の調査にも表れている。

MIPIM会場の入り口には、市況の回復を表すように雄牛の像。参加者が次々に吸い込まれていく

投資ムードの回復を受け、にぎわいを見せる会場内

 不動産仲介・コンサルティング大手の米CBREは3月13日朝、2012年の欧州での不動産取引高が前年比6%増を記録したと発表した。これは、英国に比べて回復が出遅れていた大陸諸国の市場回復が主な要因だ。同社が主要なファンドや年金基金などにアンケートした結果をみると、今後年末までに不動産の取得を増やすとの回答した投資家は全体の58%に達し、1年前の前回調査での回答45%を上回った。また、投資額についても、昨年より20%以上増やすとした回答が30%を占めた。

 この背景には、欧州の金融機関における不動産融資態度の大幅な改善がある。同業の米Cushman & Wakefieldは、欧州での不動産融資が2012年を通じて29%増加したと発表した。2013年は、さらに22%の増加を見込んでいる。これは同社が109人の融資担当者を対象に実施したアンケートによるもの。欧州債務危機が深刻化し、融資が干上がった一昨年の状況とは様変わりした。ただし、自国中心、コアアセット中心の傾向は依然として強いという。

 夕方、疲れた足を引きずり広い会場を出れば、あちらこちらのホテルやレストランから賑やかな笑い声が聞こえてくる。MIPIM伝統の華やかなパーティー文化は健在だ。

12日に開かれた日本に関するセッションにも、多くの投資家が参加した

会期中、近隣のホテルやレストランでは、MIPIM恒例のパーティーが催される

本間 純=仏カンヌ