ここ数年でMIPIM(ミピム)に定着した「HTLラウンジ」は、ホテルを中心にリゾート施設などのホスピタリティ分野をテーマとした特設コーナーだ。HTLとはHotel, Tourism, Leisureの略。今年は同分野を得意とする会計・コンサルティング会社のPKFがスポンサーとなり、9社の展示が併設されたラウンジとバー、会議室を設置。開発プロジェクト50件あまりのプレゼンテーションをはじめ、ホテルオペレーターと投資家の合計50人がマンツーマンで2分づつ面談する「パワーミーティング」などが行われた。

 投資家の関心を集めたのは、欧州で勢いを増すバジェットホテル(低価格ホテル)だ。スペースや人材の無駄を省き、さらにチェーン運営で経営効率を追求するバジェットホテルは、高級ホテルよりも一般に収益率が高い。欧州の三つ星以下のホテル市場では家族経営(パパママストア)の小規模なものが多く、実際に訪れてみるまで品質を予測できないことが多いが、日本流の規格化されたビジネスホテルにも通じるコンセプトが徐々に浸透しつつあるようだ。また、従来よりもデザイン性と機能性を高めることで、利用者の幅も急速に広がっている。

 木曜日に行われたパネルディスカッション「High expectations for low budget hotels」では、話題のバジェットホテル代表らが成功事例を語った。ドイツMotel Oneのマネージングディレクター、Phillipe Weyland氏は、「清潔で明るい部屋、高品質のベッドと浴室のほか、デザイン性が顧客に大きくアピールする時代になった。レストランなどの施設は不要だが、しゃれたバーはコミニケーションの場として求められている。またインターネット予約によって料金体系が明確になり、クチコミレビューでの評価が従来のホテルレーティングでの星の数よりも重視されている。」と述べる。保守的なドイツ市場でも急成長している同社は、「新興諸国の中間層が増える今後、バジェットホテルのニーズは世界的に高まるだろう」とみている。

 一方、景気に左右されやすい高級ホテル市場では、ブランドイメージを活用して長期滞在用の部屋(レジデンスホテル)を併設し、収益の安定性を確保する戦略が目立っている。また、リゾート市場では、住戸のオーナーが使用しない期間をホテルとして貸し出す、タイムシェアの一種「Buy to let」形式が普及しつつあるという。



篠田 香子=フリーライター