「開業8年になるスキードバイは周辺アラブ諸国に今も大人気で、隣接するモールも大きく潤っている。政府や自治体の協力で、地元だけでなく国外の市場も取り込むことができた」(Alain Bejjani氏)。同氏はドバイのデベロッパー、Majid Al Futtaim Propertiesの事業開発責任者だ。MIPIM(ミピム)会期2日目の3月13日、「Re-Entertainment: An upcoming trend for developers and Investors?」と題したパネルディスカッションに登壇して語った。

 エンターテインメント施設に特化したデザイン、コンサルティング会社、米BRC Imagination Artsによると、複合商業施設の大規模化に伴い、その中でエンターテインメント施設の占める割合も、かつての5%ほどから近年は15%以上に拡大している。単なる買い物以上の楽しい体験を求める消費者が増えているためで、エンターテインメント要素の強い飲食コーナーなども含めると、その占める割合は総面積の半分以上になりつつある。

 会議のモデレータを務めたBRCのマネージングディレクタ、Bart Dohmen氏によると、「いまや生活の場の一部となりつつある、巨大複合施設にエンターテインメントは欠かせない要素だ」という。エンターテインメント施設だけを見ると利益率は低いが、その集客力が周辺のビジネスに大きく波及する。商圏も単純な商業施設の平均が30分圏内であるのにくらべて、2時間圏周辺まで大きく広がる。「エンターテインメント施設は消費者の家の外での活動を促進し、地域経済を活性化させる。デベロッパーはその影響力を広い視野でとらえるべき」(Dohmen氏)。

 同会議では、スキードバイのほかにも様々な成功例が紹介された。

 テーマパークの集まる米フロリダ州オーランドは海外からの旅行者にも人気の観光地。ディズニーワールド、シーワールドはそれぞれ娯楽性の強い飲食店モールを併設しており、大半のビジターがここにも寄る。低迷していたユニバーサル・スタジオが、2010年にハリー・ポッターのアトラクションを設置したことで大きく集客を伸ばした際には、隣接する12万m2のショッピングモールも大きく売り上げを伸ばしたという。

 また、カナダ・モントリオール市は中心市街地にエンターテインメント・ストリートを開発したことで、大きく観光収入を伸ばしている。「エンターテインメント・ストリートには劇場、スポーツセンター、ショッピングモールなど合計3万人以上を収容できる施設が点在している。屋内・屋外で通年多様な祭典を主催しており、参加料は無料。同市の都市開発担当者Alain Tassè氏は、「官民協同で長期的な開発を進めており、好調な民間のビジネスが後に税金となって市に還元される。楽しい町は人口増の要因でもある」と話した。

篠田 香子=フリーライター