MIPIMでは10年ほど前からホテル投資のテーマが投資家らの関心を集めている。今年はホテル&ツーリズム分野の展示が増え、カンファレンスでも頻繁に取り上げられるようになった。

 イベント2日目にあたる14日、「Investment: trends, analysis & insights」と題したホテル投資のパネルディスカッションが開催された。仏AXA Investment Managersの不動産部門のHead of Sector Specialists、 Amal del Monaco氏は「10年ほど前まではオルタナティブ投資とされていたホテル不動産が、アセットクラスとしての地位を確立した」と説明。総運用額の5%にあたる30億ユーロ(約3900億円)をホテル・アセットに投資しているが、今後は10%に増やす方針を明らかにした。「世界旅行市場は10年後に20億人に達すると予測されており、そのポテンシャルは高い」と語る。

AccorInvest Group CEOのJohn Ozinga氏(左)と、AXA Investment Managers - Real AssetsのHead of Sector Specialists、Amal del Monaco氏(右)   写真:篠田香子
AccorInvest Group CEOのJohn Ozinga氏(左)と、AXA Investment Managers - Real AssetsのHead of Sector Specialists、Amal del Monaco氏(右)   写真:篠田香子
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 大手ホテルチェーンでも近年、オペレーション部門から分化した不動産投資部門が積極的な動きをみせている。仏AccorInvest GroupのCEO(最高経営責任者)であるJohn Ozinga氏は上記のセッションの壇上、「毎週1軒以上のアコーホテルが世界各地で開業しており、今後は買収、開発によるグループ規模の拡大が目標となる」と語った。AccorInvestは、ソフィテル、メルキュール、フェアモント、ラッフルズ、ノボテル、イビスなどのブランドで世界約100カ国、4300軒以上を運営するAccor Hotelsの子会社。アコー傘下のホテルのうち891軒を保有し、長期契約で親会社に賃貸している。

 Ozinga氏はセッションの席上、親会社が保有する同社の株式55%を売却する計画があることを明らかにした。主要な売却先はGIC(シンガポール政府投資公社)、サウジアラビアのPublic Investment Fund (PIF)、フランスのCredit Agricole Assurancesや系列の資産運用会社Amundi、米国のColony NorthStarなど、いずれもホテル投資に高い関心と期待を示している機関投資家やファンドだ。

 アコーホテルズは日本でもスイスホテル南海大阪、メルキュール東京銀座など10軒を運営。海外では伝統的なホテルだけでなく、1万軒近い高級民泊施設やコンシェルジュ派遣・代行サービス会社なども傘下に収め、総合トラベルグループとして多角化戦略を進めている。「今回の売却がもたらした44億ユーロ(約5800億円)で、Accor Hotelsはホテル運営事業を一層拡大できる。株主にも大きく貢献できる計画で、今年の第2四半期の株主総会で分社化が正式承認されるだろう」(Ozinga氏)。 

篠田香子=フリーランス