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編集長が語る日経アーキテクチュアの見どころ

もう一度だけ、雑誌の「雑」たる強みについて

2017/02/08

 前回のこのコラムで、雑誌は「雑(=いろいろなものが入りまじっている)」であることにこそ強みがある、ということを書きました(あえて「雑」を名乗る「雑誌」の強み)。これについて何人かの方から感想をいただきましたので、「雑」について考えるところをもう少し書かせてください。

 私が日経アーキテクチュアの編集長に就任したのは、創刊40周年記念号に当たる2016年4月14日号でした。今号の2月9日号は就任から10カ月目、編集長として21冊目の号となります。その間、長としていろいろな業務を経験してきましたが、最も重要な役割は、限られた誌面のなかで「適正な“雑”性」を保ち続けることではないか、と思うようになってきました。

 個人的な話になりますが、私が日経アーキテクチュアに配属されたのは1990年。当時はバブル経済の全盛期で、本誌のページ数も現状の2倍を超えるようなこともありました。当時は雑誌を「第三種郵便」という方法で読者に送り届けており、これの規定を満たすには、広告ページが全体の半分未満でなければなりませんでした。つまり、景気が良くて広告出稿の要望がたくさんあると、それを上回る記事をつくらなければならなかったのです。

 そういう時代には、「雑」であることなどことさら意識しなくても、自然にいろいろなものが入りまじった誌面ができました。というより、何でも記事にしないとページが埋まらない、というのが実状でした。

 しかし、時代は様変わりし、現状では取り上げたいテーマはたくさんあるのに、誌面と記者は限られています。何を誰に取材してもらうか、が毎号の悩みです。

 効率と“読者の受け”を考えれば、過去に読まれたテーマを同じ記者に繰り返し取材してもらうことが最もクレバーな選択でしょう。しかし、それだと雑誌はすぐに“たこつぼ化”していきます。

 一般の新聞のように、同じテーマを追うメディアが複数存在するならば、ある視点を徹底的に掘り下げていって差別感を出すというやり方もあるでしょう。けれども、日経アーキテクチュアの読者(このウェブも含め)の場合、建築に関わる情報のほとんどを日経アーキテクチュアを通して知る、という人も少なくないのです。ある事象だけを追い続けると、違う領域を主戦場とする人の関心からは遠のいてしまいます。

 また、昨今の英国EU離脱や米国大統領選の報道を振り返ると、メディアが1つの方向性に結論を収れんさせようとし過ぎることの危険も感じます。

 私は編集長就任時にこのコラムで、「『社会を映す』から『社会を動かす』へ」と書きました(創刊40周年、新編集長からご挨拶)。それは社会をある方向に動かしたいという意味ではありません。社会が動き出すための選択肢を読者に用意したいという意味です。

 そもそも日経アーキテクチュア本誌や、このウェブサイトをご覧になっている方は、「メディアが右と言えば右にならう」ような単純な読者でないでしょう。日経アーキテクチュアでは、「適正な“雑”性」を保ちながら、適切なタイミングで複数の手掛かりを示すことが最も重要なのではないかと考えています。

 なんだか大きな話になってしまいましたが、今号(2月9日号)も、日経アーキテクチュアが「雑」であることの強みを発揮した号です。

宮沢 洋日経アーキテクチュア

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