創刊40周年となる4月14日号から日経アーキテクチュアの編集長を務めることになりました宮沢洋です。今号の見どころの前に、少し昔話をさせてください。

 日経アーキテクチュアは、2度のオイルショック(1973年、79年)の谷間に当たる1976年4月に創刊しました。当時はオイルショックによる建設費の高騰がすさまじく、国内の建設需要が一気に低迷。諸先輩方の語るところによると、「バブル崩壊後よりももっと深刻な状況だった」といいます。

 創刊時の日経アーキテクチュアを開いてみますと、海外の設計事務所の活動紹介や、国内外の火災や地震、事故などの調査報告の記事が目に付きます。建築の「社会性」に重きを置いた誌面づくりは、「作品紹介」中心の多くの建築系雑誌とは、方向を異にするものでした。

 建築を「社会」に開く──。編集方針の根幹は、40年たった今も変わってはいません。ただ、40周年を機に大きく変わったことがあります。「雑誌+ウェブ」が一体となった情報発信へと移行したことです。

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 昨年までは、日経アーキテクチュアといえば「雑誌」のことでした。しかし、今年1月、日経BP社の建設・不動産分野を束ねてきた「ケンプラッツ」を再編し、同サイトの建築・住宅面を日経アーキテクチュアのウェブサイトとしました。

 単に「発信のツールが増えた」ということだけではありません。前述のように、日経アーキテクチュアは「建築を社会に開く」ことを意識して誌面づくりを行い、建築界に多少なりとも影響を与えてきたと自負しています。しかし、「建築専門家だけが読む」雑誌である限り、社会を巻き込んだ大きなムーブメントに結び付けることは難しかったのです。取材をしている記者たちが無力感にさいなまれることもありました。

 しかし、新生した日経アーキテクチュアのウェブサイトならば、広く一般の人に問題を投げ掛けることも可能です。いわば「社会を映す」だけのメディアから「社会を動かす」ことが可能なメディアへと転換したのです。昨年来、発信している「杭騒動」の記事へのアクセスの多さは、それが決して大げさではないことを物語っています。さまざまな情報が交錯するなかで、今後も専門メディアとして信頼できる情報を、社会に向けタイムリーに発信していきたいと思います。

 さらにいうと、今後の日経アーキテクチュアは、雑誌を核とする「総合的なサービス」に変わっていくべきだと考えています。その1つとして、まずは5月20日に創刊40周年記念シンポジウムを開催します。その後も、さまざまなイベントを実施していく予定です。これからの日経アーキテクチュアの変化にご期待ください。