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受注環境は20世紀に逆戻り?

 直轄事業が国から自治体に移ると、受注環境はどう変わるのか。

 「入札方式や契約方式が10~20年ほど前に逆戻りする恐れがある」。日経コンストラクションの取材に対して、国交省や自治体の職員たち、建設会社の技術者たちがこう答えた。

 例えば、国交省が2007年度に工事の入札で総合評価落札方式を採用した比率は件数ベースで97.0%。一方、自治体で同方式を多く採用した宮城県でも同比率は30.6%しかない。建設コンサルタント業務の契約をプロポーザル方式で実施した件数も、国交省と自治体との間に大きな差がある。

●国と自治体に大きな差
国と自治体に大きな差

 国道や河川の移管に伴って国交省の各地方整備局の職員も自治体に移るので、自治体でも総合評価落札方式やプロポーザル方式が増えるのではないか、という観測もある。

 しかし、自治体の入札方式がすぐに改善されるとは限らない。「改革を率先できる優秀な職員は国交省に残る」(ある自治体の職員)かもしれないからだ。

 直轄事業が自治体に移ると、地場の会社に優先して発注する工事や業務が増える可能性もある。

 「地場の建設会社と共同企業体(JV)を組んだり、各自治体に営業所を置いたりしなければ受注できなくなりそうだ」と、ある準大手建設会社の部長は警戒する。「いまの建設会社は、かつてのように多くの支店や営業所を抱える体力がない」とも。

 さらに、「入札改革が進まない自治体の工事は、安値で入札するか、談合するかしなければ受注が難しい。利益の出ない工事や、重い刑罰を覚悟してまで受注する工事に魅力はない」と、この部長は続ける。受注者が発注者である自治体を選ぶ傾向が強まりそうだ。

 「新技術の開発も進まなくなる」。ある建設コンサルタント会社の課長はこう予測する。この課長が以前、長距離の推進工法で造る下水道管を設計したところ、自治体の職員から修正を求められた。地元の建設会社が施工できない工法だったからだ。

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