おおむね3年後までに、国土交通省が管理する直轄国道や一級河川を職員とともに自治体に移して、地方整備局を廃止せよ──。

 政府の地方分権改革推進委員会(委員長:丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)が国の出先機関の見直しを勧告したのは2008年12月のこと。勧告が現実になると、公共事業の受注環境やインフラの維持管理にどのような影響を及ぼすのだろうか。

 分権委の勧告によると、国が直轄で実施する公共事業は、複数の都道府県に関係する広域的な事業や緊急を要する災害復旧事業、高度な技術力が必要な事業などに限定。「地方工務局」が引き継ぐ。

東京都千代田区の半蔵門交差点に並んで立つ「国道20号」と「都道401号」の標識。地方分権改革推進委員会はこうした一続きの道路にもかかわらず、国と自治体が別々に管理する「二重行政」の無駄の排除を打ち出した (写真:日経コンストラクション)
東京都千代田区の半蔵門交差点に並んで立つ「国道20号」と「都道401号」の標識。地方分権改革推進委員会はこうした一続きの道路にもかかわらず、国と自治体が別々に管理する「二重行政」の無駄の排除を打ち出した (写真:日経コンストラクション)

 一方、それ以外の直轄の公共事業は、住民や議会の目が届きやすい都道府県や政令市に移す。勧告では、移管の対象となる直轄国道や一級河川の条件を示した。

 例えば、直轄国道の場合、同一の都府県内に起点と終点がある区間や人口30万人未満の都市を結ぶ区間などを移管する。上の写真にある国道20号は後者の条件に当てはまる。

 移管の対象となるのは、直轄国道2万1500kmのうち約7600km。一級河川109水系のうち65水系。2007年度の事業費で見ると直轄国道の25.3%、一級河川の38.1%に当たる(下の図参照)。

 さらに、分権委は国交省の各地方整備局の職員を自治体に移行すべきだと勧告した。分権委の試算によると、直轄国道の移管に伴って2600人、一級河川の移管に伴って3000人がそれぞれ移る。

●地方分権改革推進委員会が示した国道や河川の移管
地方分権改革推進委員会が示した国道や河川の移管

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