日経ホームビルダーでは、住宅で生じるトラブルをクローズアップした特集を、継続的に発信しています。最近の記事を振り返っても、雨漏り、結露といった不具合や耐震性能不足、基礎のひび割れといった問題を取り上げてきました。その多くは建物本体を取り扱った内容です。

 一方で、住宅の設計や施工に携わる実務者に独自のアンケートを実施したところ、8割近くの回答者が、過去5年以内に引き渡した住宅で住宅設備のトラブルが「発生した」と回答しました。建物本体の問題だけでなく、住宅に実装する設備の問題も無視できない事象だと改めて痛感しました。

日経ホームビルダー2018年4月号の特集「知らないでは済まない住設トラブル」(出所:日経ホームビルダー)
日経ホームビルダー2018年4月号の特集「知らないでは済まない住設トラブル」(出所:日経ホームビルダー)
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 日経ホームビルダーでは2018年1月号で太陽光発電システムに焦点を当てた特集「太陽光発電が危ない」を掲載いたしました。建物本体を扱った記事ではなかったにもかかわらず、この記事への反響は大きく、読者やさまざまな組織から問い合わせを受けました。設備に対する住宅実務者の関心が高いという事実の一端が、ここにも表れていたのです。

 そこで、日経ホームビルダー4月号では、住宅設備のトラブルに着目した特集「知らないでは済まない住設トラブル」を掲載しました。「エネファーム」や「エコキュート」といった省エネ給湯器や換気扇、こんろ、温水洗浄便座、エアコンといったさまざまな住宅設備について、近年発生した騒音や火災、やけど、故障といった事象の種別ごとにトラブル事例を詳説しています。

 特集記事では、トラブルの事例を紹介するだけでなく、そうした問題を防ぐための対策についても触れました。個別の事象への対応のほか、近年、導入が進み始めた保険の仕組みなども紹介しています。

 住宅設備のトラブルはメーカーだけで対応するとは限りません。アンケート調査で住宅の実務者がトラブルに遭遇した割合が高い点からも明らかなように、建て主が住宅会社を頼るケースは決して少なくありません。住宅設備で生じているトラブルの事例を注視する姿勢は、住宅会社にとっても顧客対応のレベルアップに結び付くはずです。

 同号で注目の記事は、まだまだあります。例えば、奈良県三郷町を走る近鉄生駒線沿いの高台に位置する住宅地で生じた土砂崩壊のその後を取り上げたリポート「鋼管杭が大惨事を防ぐ」。事故原因の調査結果をまとめた最終報告が出たので、その内容を解説しました。

 土砂と擁壁の崩壊があったにもかかわらず、住宅自体が崩れ落ちずに済んだのは、支持層まで杭を打ち込んでいたためでした。地盤に応じた適切な対策の重要性が改めて浮き彫りになっています。

 国土交通省国土技術政策総合研究所がまとめた「木造住宅の耐久性向上に関わる建物外皮の構造・仕様とその評価に関する研究」(以下、ガイドライン)について、分かりやすく説明した連続リポート「課題残した屋根の通気層」も目を通していただきたい記事です。

 4月号では屋根に通気層を設ける重要性を示した研究成果を取り上げたのですが、実際の住宅に適用していくには、まだハードルがありそうな点も指摘しています。

 このほか、「事例で分かる雨漏り修理のツボ」や「これなら売れる!省エネ改修」といった好評の連載記事も豊富に取りそろえました。「私の修業時代」では、住宅設計者として有名な伊礼智氏が登場。設計の標準化の取り組みについて振り返ってもらいました。