インフラ投資には特有のリスクがある。新刊「よくわかるインフラ投資ビジネス」著者の福島隆則氏(三井住友トラスト基礎研究所)が語る。

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福島隆則氏(三井住友トラスト基礎研究所 上席主任研究員)
福島隆則氏(三井住友トラスト基礎研究所 上席主任研究員)

――良いインフラ投資と悪いインフラ投資について言及しています。

福島 良し悪しを対比することで、日本のインフラ投資ビジネスが健全に発展するための要件について整理しました。良いインフラ投資の案件は、長期にわたって安定した利益を生み続けます。誰もが良いインフラ投資をしたいと考えるでしょうが、関係者が多くて事業期間が長いと、難しいことがいくつも出てきます。

 投資ビジネスには、民間の資金やノウハウを活用できるという魅力がある半面、利益追求が行きすぎて問題が生じることもあります。例えば、一部の投資家だけが莫大な利益を得て、利用者は料金の値上げで不便になり、インフラの維持管理も行き届かないようなケースは悪いインフラ投資といえるでしょう。

――インフラ投資の典型的な失敗として、長期の安定需要を期待して高い価格で取得した事業の収益が、その後の需要の低下とともに落ち込むケースがあります。

福島 運営事業者は苦しい経営を強いられ、投資家は損失を被ります。後になって関係者は、需要の過大評価と価格設定の間違いを犯したと批判されます。不動産投資でも、このような失敗は何度か起きてきました。市況の悪化によって賃料相場が下がり、稼働率も低下して事業が破綻するケースです。

 未来を正確に予測することは不可能ですが、長期に安定した結果が出せるように計画することはできます。需要を手堅く見込み、当初の事業価格を合理的に評価できれば、需要が伸びなくても計画と実際のギャップは小さく抑えられます。

――そうはいっても、負債を抱えた公共セクターは、インフラを少しでも高く売りたいと思うでしょうし、民間事業者は競争に勝つために高い価格を付ける場合もあるでしょう。インフラ投資ビジネスで理想を追求することは簡単なことではありません。

福島 ただ、事業価値を少しずつ大きくしていく「小さく生んで大きく育てる」考え方は心に留めておくべきです。これは「投資でインフラを育む」感覚といえます。