郵船不動産がテナントに還元した今夏の節電による電気料金相当額が、対象となる賃貸オフィスビル6棟の合計で約1000万円になった。同社は、東日本大震災による電力不足の影響で節電対策を強化したことを受けて、節電相当額をテナントに還元することを4月に決めていた。

 節電相当額の還元の対象となったのは、東京電力管内の丸の内郵船ビル、天王洲郵船ビルなど6棟(延べ床面積の合計約13万5000m2)のテナント約110社だ。還元額は4月~8月の5カ月間の合計で990万円。ビルやテナントによって様々だが、平均すると1棟あたり165万円、1テナントあたり9万円になる。

 共用部では、照明の間引き、エレベーターの間引き運転、電気温水器の一部停止などの対策を実施。テナントにとっては、通常の運用と比べてサービスが低下した状態になっていた。節電相当額は、前年同月と比べて減った分を契約面積に応じて算出した。例えば8月の共用部の電気使用量は、ビル6棟の平均で前年同月比-34%だった。専用部でも、空調を集中コントロールするセントラル空調方式のビルで、空調温度を通常よりも高く設定することに合意したテナントには、設定温度に応じて妥当な額を算出し、契約面積に応じて節電相当額を還元した。

 「きちっとした大家さんでよかった。浮いたお金はどこへ行くのかと疑問に思っていた。エレベーターは2台中1台が止められ、共用部も暗かった。節電分の還元がなかったら、ここまで協力できたかどうか」。「返ってきた金額はわずかだが、還元があったので社内に節電の協力を求めやすかった」。節電相当額の還元の対象となった郵船不動産のビルのテナントには、取り組みを好意的に受け止める声が多い。


*関連記事を「日経不動産マーケット情報 11月号」に掲載しました。