エレベーターを一部、停止するなど節電強化中の郵船茅場町ビル
エレベーターを一部、停止するなど節電強化中の郵船茅場町ビル

 郵船不動産は、東京電力管内で賃貸するオフィスビルについて、共用部で節電した電気料金相当額をテナントに還元する。東日本大震災による電力不足の影響で節電対策を強化していることを受けて、実施を決めた。丸の内郵船ビル、天王洲郵船ビルなど6物件のテナント約130社が対象となる。「一棟貸し」と呼ばれる、1テナントに建物ごと貸しているビルは対象としない。

 共用部では、照明の間引き、エレベーターの間引き運転、電気温水器の一部停止などの対策を実施している。テナントにとっては、通常の運用と比べてサービスが低下した状態になっている。郵船不動産は、節電がテナントの協力なしに成り立たない現実を踏まえて、節電相当額を還元するのが本来のあり方だと判断した。空調を集中コントロールするセントラル空調方式のビルで、空調温度を通常よりも高く設定することに合意したテナントには、空調費の節電相当額も還元する。

 共用部の節電相当額は、昨年同月と比べて減った分を契約面積に応じて還元する。2011年4月の共用部における電気使用量の削減率は昨年比で1~4割。空調費の節電相当分は、設定温度に応じて妥当な額を算出し、契約面積に応じて還元する。室温を28度に設定した場合、1坪あたり数百円になる見込みだ。節電分は毎月の賃料請求時にマイナス計上する。月の途中から対策を実施した3月の還元額は、賃貸面積によって異なるが、テナント1社あたり数千円~数万円だった。

 節電強化は、ビル事業者にも想定外の負担を強いている。例えば、照明を間引く作業に労力がかかり、間引いた蛍光灯を保管するための資材も必要だ。省エネタイプの照明を導入するにも追加投資を伴う。こうした手間や費用がかかることから、共用部の節電分の還元に二の足を踏むビル事業者が多い。

 郵船不動産のビルでも、節電対策に特別な出費が生じている事情は同じだ。しかし、節電が長期にわたることもあり、テナントの理解を得るためには還元するのが明朗な対応だと考えた。4月初旬に社長も参加して開催したプロパティマネジャー会議で決定した。