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「クリエイティブな才能を集め、引き止める」ことができるか

 話は飛ぶが、「創造性」というキーワードで思い当たるのが、米国の社会経済学者、リチャード・フロリダ氏のベストセラー書「The Rise of the Creative Class」(創造的階級の台頭)だ。

 ここでいう創造的階級とは、建築家から芸術家、エンジニアや科学者、作家、上級管理職、プランナー、そしてアナリストから医師、金融や法律の専門家まで、高度にクリエイティブな職に就き、経済に大きな価値をもたらす仕事をしている人々をさす。米国では約3割がこの階級に属するという。

 最近、同氏の著書「The Flight of the Creative Class」の邦訳書「クリエイティブ・クラスの世紀」(井口典夫訳、ダイヤモンド社)が、「The Rise of the Creative Class」の翻訳に先立って出版された。この中で著者は、「クリエイティブな才能を集め、引き寄せ、引き止めること」が、国際競争力を高めることの中心的な意味になっていると述べている。

 「クリエイティブな才能を集め、引き寄せ、引き止める」ことは、日本国内の産業間、企業間の競争にも当てはまる言葉だ。明快かつ魅力的な企業ビジョンを示して優秀な人材を集め、クリエイティビティを存分に発揮できるワークプレイスを提供して組織への帰属意識を高めることは、企業発展の必須条件だろう。

 そのワークプレイスはIT機器の進歩やテレワークの進展とともに、変貌を続けている。今は最先端と思われているワークスタイルも、やがては普遍化し、社会や企業の仕組み、制度を変える可能性すらある。

 すでに「1日の勤務時間」という概念は希薄になりつつある。ここにきて浸透し出した「ワーク・ライフ・バランス」の考えに基づくワークスタイル、例えばSOHO(Small Office, Home Office)や在宅ワークが普及すると、オフィスの役割、機能も変わらざるを得なくなる。

 アクセンチュアやインテリジェンスのオフィスを含めて、KEN-Platz(ケンプラッツ)のテーマサイト「オフィス・アイ」で紹介されている最近のオフィスを見ても、ワーカーに快適な空間を提供し、創造性を引き出すことに腐心している工夫例が目を引く。フロリダ氏が言う創造的階級の人々が集まる場に、デスクを島型対向に並べただけで終わるオフィスは、もはやあり得ない。