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暗黙知と形式知が相互に循環するSECI(セキ)モデル

 では、いかにして、ワーカーの創造力を刺激するようなワークプレイスを構築すればよいか。「オフィス・アイ」サイトで紹介されているオフィスにも参考になる事例が数多くあるが、最近、(社)ニューオフィス推進協議会(NOPA)から発行された「クリエイティブ・オフィス・レポート」という冊子(税込み1500円)が面白いので紹介する。

 このレポートでベースになっているのは、SECI(セキ)モデルと言われるものだ。SECIモデルとは、個人が保有している暗黙知を形式知化し、それを共有し実践することで、また個人の暗黙知としていく――そのプロセスを回していくことで、組織としての知識創造力を高めていくという考え方だ。一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏が提唱した。

プロセスが、
(1)共同化(Socialization、暗黙知を暗黙知へ)
(2)表出化(Externalization、暗黙知を形式知へ)
(3)連結化(Combination、形式知を形式知へ)
(4)内面化(Internalization、形式知を暗黙知へ)
の4つに分かれており、それぞれの英語の頭文字をとってSECIモデルと称する。

 レポートでは、個人が実感しやすいように、個人の行動レベルに合わせた形で4プロセス、12の行動に分け、それを実践することで、知識創造スパイラルが増大すると説明している。

 ちなみに、4プロセス、12の行動は下記のように区分され、こうした行動を誘発する空間の代表例が示されている。

(1)共同化(暗黙知→暗黙知)=刺激しあう
 01、ふらふら歩く。<ジグザグの通路>
 02、接する。<雑談スペース>
 03、見る、見られる、感じあう。<ガラス張りの執務空間>

(2)表出化(暗黙知→形式知)=アイデアを表に出す 
 04、軽く話してみる。<開放的なソファのある空間>
 05、ワイガヤ・ブレストする。<大きめの可動テーブルのある空間>
 06、絵にする。たとえる。<ホワイトボードを囲める空間>

(3)連結化(形式知→形式知)=まとめる
 07、調べる。分析する。編集する。蓄積する。
                 <落ち着いてPCに向かえる空間>
 08、真剣勝負の討議をする。<声が外に漏れない会議室>
 09、診てもらう。聴いてもらう。<プレゼン用の空間>

(4)内面化(形式知→暗黙知)= 自分のものにする
 10、試す。<試作などが可能な空間>
 11、実践する。<商談スペース>
 12、理解を深める。<研修室>