現場状況を隅々まで3D情報を持った写真データとして記録し、クラウドで配信する技術が進化してきた。そのメリットは現場に出張する費用や時間を節約できるだけでなく、必要な部分の寸法をいつでもデータ上で測れることだ。これまでは多くの設計者や技術者が現場に出向いていたが、これからは逆に現場の方がオフィスのパソコンに“出前”されることが多くなりそうだ。

 東京・品川の高層ビルにオフィスを構える建設ベンチャー企業、U’s Factoryには、大手ゼネコンやサブコン、電話会社などからひっきりなしに現場の計測依頼が飛び込んでくる。

 同社は周囲360度を撮影できる手持ち式ビデオカメラと、ビデオ画像から3Dデータをつくる技術を組み合わせて、現場を3D情報付きの写真データ(以下、3D写真)にする「RobotEye Walker 4D」を札幌市の岩根研究所と共同開発した(関連記事)。

周囲を360度撮影できるビデオカメラを手にするU’s Factoryの上嶋泰史代表取締役社長(写真:家入龍太)
周囲を360度撮影できるビデオカメラを手にするU’s Factoryの上嶋泰史代表取締役社長(写真:家入龍太)

 3D写真とは、パソコン上で再現した“現場”をウオークスルーしながら、立ち止まった場所から上下・水平方向に360度を見回すことができるものだ。見た目はGoogle Maps上で道路上から街をぐるりとながめられるグーグルストリートビューにそっくりだが、実は似て非なるものだ。

 3D写真は、写真の各部分が3Dレーザースキャナーで計測した点群データのように3次元座標を持っている。そのため、必要な部分の座標や寸法は、パソコン上の3D写真をクリックするだけでいつでも測ることができるのだ。

3D写真をパソコン上で見たところ。必要な部分の寸法をいつでも計測できる(資料:U’s Factory)
3D写真をパソコン上で見たところ。必要な部分の寸法をいつでも計測できる(資料:U’s Factory)