上編から続く)

出火率と延焼率に基づいた火災危険度

 東京都は2013年9月、首都が地震に襲われたときの危険度を、5133の街(町丁目)ごとに調べた「地震に危険な街ランキング」を公表した。前回の「建物倒壊危険度」に続いて、今回は「火災危険度」に焦点を合わせる。

 火災危険度(=地震火災危険度)とは、「地震の揺れで発生した火災の延焼により、広い地域で被害を受ける危険性の度合い」。地震で全焼する建物が、1ha(1ヘクタール=1万m2)当たり、何棟あるかを調べて判断する。

 調査は2段階方式だ。まず、出火率を推定する。出火率はオール電化の鉄筋コンクリート造マンション、火を使わないオフィスなどでは低く、古い木造住宅、火を使う料理店、化学薬品を扱う工場などで高くなる。

 次に、延焼率を推定する。延焼率は木造建物などが密集している地域では高くなり、逆に広い道路や公園が多いと低くなる。また、周辺に危険な地域があると、もらい火をするために延焼率が高くなる。

 ワースト1位の足立区千住柳町では、火災危険量は58.64棟/haなので、1ha(1ヘクタール=1万m2)当たり58.64棟の建物が延焼することを意味する。ちなみに、建物倒壊危険量の東京都全体の平均は1.58棟/ha、区部の平均は2.55棟/ha、ワースト100地域では22.59棟/haである。

 こうして作成された「生の火災危険度ランキング」に、「災害時活動困難度」を加味したものが「複合型の火災危険度ランキング」になる。

 「災害時活動困難度」とは、道路の整備状態を重視したもの。地震に襲われて災害が発生したとき、道路の幅が狭かったり、迷路のように複雑に走っていたりすると、避難、消火、救助のための活動が困難になるので、危険度が増大する。一方、道路の幅が広く、かつ碁盤の目のように整然と走っていれば、避難、消火、救助のための活動を行いやすいので、危険度は低減する。