記事は、日経BP社が2007年に発行した書籍「法律・建築のプロが選んだ!契約・敷地トラブル判例50選」から転載しています。この書籍は、日経アーキテクチュアの法務関連記事のなかから1997~2006年に掲載した重要記事を収録しています。判例や法解釈は掲載当時のものです。
また、書籍「法律・建築のプロが選んだ!設計・監理トラブル判例50選」から転載した「トラブル判例解説 設計・監理編」も掲載しています。
記事は、日経BP社が2007年に発行した書籍「法律・建築のプロが選んだ!契約・敷地トラブル判例50選」から転載しています。この書籍は、日経アーキテクチュアの法務関連記事のなかから1997~2006年に掲載した重要記事を収録しています。判例や法解釈は掲載当時のものです。
また、書籍「法律・建築のプロが選んだ!設計・監理トラブル判例50選」から転載した「トラブル判例解説 設計・監理編」も掲載しています。
付録
Q. 設計料の300万円を依頼者が支払わないので裁判を起こしているが、裁判所から200万円の支払いを受けて和解するように勧められた。相手は設計料の支払い義務はないと主張していたのに、200万円なら支払うと言っている。このような和解は、正しい方が損をし、悪い方に得をさせる制度のようで納得がいかないのだ…
CASE 50
筆者は、イサム・ノグチ氏(故人)が手がけた、慶応義塾大学の三田キャンパス内にある歴史的建築物の解体、移設にかかわる工事の仮処分決定に関する解説を、日経アーキテクチュア誌面で紹介した。後日、その記事を読んだこの事案の関係者から相談を受けることがあった。仮処分決定は、申し立てを却下する、いわゆる“門前払…
全128 枚のうち3枚のみ複製と認定 CASE 49
工事費が予算内に収まらなかったことを理由に、設計業務契約を解約された設計者Xは、発注者と設計を引き継いだYなどを相手取り、設計図面の著作権侵害を理由に損害賠償を求めて訴えた。主な争点は、Xの図面に著作性があるかどうか、著作物を複製したのかどうか。裁判所はXの図面128枚とYの図面を詳細に比較して、3…
建築の著作権侵害で訴えられる CASE 48
建築を巡る著作権の紛争事例で判例として公刊されているものは、ほとんどが設計図書を巡る紛争となっている。建築物自体が類似している場合、著作権侵害になるか否かに関する判例は、これまでほとんど見当たらなかった。ここでは、類似デザインの建築を巡って建築の著作権侵害、商品形態模倣が争われた事案の判例を紹介する…
設計図は著作物として保護されるか CASE 47
設計図書を作成した建築設計事務所の許諾なしに、その設計図書を利用して、別の設計者に住宅を設計させた─。こんな依頼者を相手に、原設計者の建築設計事務所が損害賠償を請求した。裁判では、この設計図書がそもそも著作物に該当するかどうかが争われた。裁判所は「著作物に該当しない」と判断。損害賠償請求については「…
設計・監理者は責任を問われず CASE 46
分譲マンションの1階部分で、毎年のように浸水被害が発生。1階住戸の購入者のうち2 人が裁判を起こした。設計・監理者も不法行為責任による損害賠償を請求された。裁判所は、「盛り土をしないで建築したことが浸水被害の原因だ」として、建築主については重い責任を認めた。一方、設計・監理者の不法行為責任については…
新築費に匹敵する改修費請求認める CASE 45
敷地地盤の不同沈下が原因で、住宅の基礎部分にひび割れを生じていることが判明した。発注者は、地盤調査せずに工事した請負人を相手取り、改修工事費用など1217万円余りの損害賠償を求めて提訴した。裁判所は、工事請負人が注意義務を怠ったとして、不法行為責任に基づき、発注者の請求をほぼ全面的に認めた。
CASE 44
電気・ガス・上下水道などの配管・配線を道路から直接引けず、他人の土地を経由しなければならない状態にある土地を「導管袋地」という。導管袋地では、隣人の承諾がなくても、その土地の地下に導管を通すことが許されることがある。2002 年10月に出た最高裁判決では、自ら設置する場合だけでなく、他人がすでに設置…
施工者や発注者の賠償責任認める CASE 43
マンション建設に伴う掘削工事によって、地盤沈下などの被害にあった隣地所有者が工事関係者を相手取って訴訟を起こし、賠償責任が認められた判例がある。建設工事が近隣へ及ぼす影響に関して注意義務を怠ると、契約関係になくても不法行為に基づいて損害賠償を負う場合がある。その際には、工事と被害との因果関係の有無が…
不服申し立ての相手先は特定行政庁に CASE 42
1999年に施行された建築基準法43条1項「ただし書き」が利用されている。接道要件を満たさない敷地における建築計画については、従来の建築主事の裁量による確認ではなく、特定行政庁が基準に従って許可し、建築審査会の同意を得ることになった。許可条件に違反すると、許可が取り消されて工事不可能になることもある…
位置指定道路が抱える問題点とは CASE 41
敷地の接道要件を満たすために、土地の所有者などが行政に申請して設ける私道を「位置指定道路」という。位置指定道路を新設するのは容易だが、所有者や周辺環境が変わって不要になった位置指定道路を廃止することは容易ではない。自治体の規制や複雑な権利関係などが障害となる。ここでは、位置指定道路の廃止に伴う問題点…
一般の通行に供していたかも争点に CASE 40
いわゆる「2項道路」の存否を巡り、行政判定を不服とする訴訟は後を絶たない。2項道路の指定要件に関しては様々な解釈が示されており、必ずしも統一されていない状況だ。東京地裁2000年3月17日判決は、2項道路の指定要件の解釈に関して新味のある判断を示した。接道建物の数と一般の通行の用に供されていたかの2…
設計者は設計変更の責任を負うか CASE 39
設計した戸建て住宅の着工後、隣家の居住者が「境界線から50cm離して建てろ」と要求してきた。設計者が設計変更を提案したところ、発注者は「設計変更するのならば損害賠償しろ」と迫った。専門家としての注意義務を怠ったために設計変更が必要になったとしたら、設計者は債務不履行を理由に損害賠償責任を負うことにな…
隣家の反対があっても築造できるか CASE 38
Aは賃貸マンション建設の際、先代が建てた塀を除去し、隣接するBの敷地との境界線に合わせて新たに塀を築造しようとした。ところが、工事費はAの全額負担にもかかわらず、Bは反対した。一般的に境界塀の築造は相隣者双方にとって有益で、Bが不利益を受けない限り、反対する合理的理由はない。この塀を築造することに問…
説明義務怠った設計者の責任は? CASE 37
敷地が道路予定地であるなど、都市計画制限があるような場合、建築行為は一定の制限内で可能だが、将来、撤去や移転などを迫られる可能性がある。こうした建築基準法以外の公法規制についても、設計者は、内容を把握して建築主に説明することが求められるのだろうか。「建築確認申請において、敷地に関する公法上の規制の有…
基準値以下の汚染でも瑕疵と判断 CASE 36
2003年2月15日に土壌汚染対策法が制定され、また不動産鑑定においても土壌汚染が評価項目に入るなど、土壌汚染は土地取引を行う際の重要なチェック項目となっている。ただ、土壌汚染を巡る紛争はその性格上、裁判ではなく当事者間で決着が図られることが多い。今後、土壌汚染を巡る紛争は増加する可能性が高い。
設計・監理者は責任を負うか CASE 35
阪神大震災で被災した注文住宅が不同沈下して被害を受けた。発注者は、大手住宅会社を相手取り、設計・監理と施工に瑕疵があったとして、損害賠償を求める裁判を起こした。地震による地盤沈下で発生した被害に設計・監理者は責任を負うのか。裁判所は提訴から判決まで4 年近くの審理を経て、基礎の設計・監理と、建物本体…
CASE 34
土地付き建売住宅の購入者は、敷地が軟弱地盤だったために地盤沈下が起きて建物に多数の不具合が生じたと主張して、売り主と仲介会社を相手に損害賠償を求めて提訴した。裁判所は、軟弱地盤であることは「隠れた瑕疵」であると判断して、売り主の瑕疵担保責任を認めるとともに、仲介会社には説明告知義務を怠ったとして不法…
CASE 33
農地を買い取った不動産会社は、露天駐車場に用途転用して、3カ月ほど利用した後、指定確認検査機関に建築確認を申請した。農地から宅地への用途転用であれば、土地の盛り土や切り土は都市計画法上の「開発行為」に当たるので、自治体の許可が必要だ。しかし、いったん駐車場として利用することで、この許可手続きを回避し…
外観、構造、機能の判断基準を示す CASE 32
東京・府中市の建築審査会は2003年1月、複数の棟からなるマンションを「一の建築物」として認めた建築確認を違法だと裁決した。一の建築物であるか否かによって、日影や斜線などの規制は大きく変わる。裁決では、建物の外観上、構造上、機能上の具体的な判断基準を示し、一体性を判断した。審査会が一体性の要件を明示…