記事は、日経BP社が2007年に発行した書籍「法律・建築のプロが選んだ!設計・監理トラブル判例50選」から転載しています。この書籍は、日経アーキテクチュアの法務関連記事のなかから1997~2006年に掲載した重要記事を収録しています。判例や法解釈は掲載当時のものです。
また、書籍「法律・建築のプロが選んだ!契約・敷地トラブル判例50選」から転載した「トラブル判例解説 契約・敷地編」も掲載しています。
記事は、日経BP社が2007年に発行した書籍「法律・建築のプロが選んだ!設計・監理トラブル判例50選」から転載しています。この書籍は、日経アーキテクチュアの法務関連記事のなかから1997~2006年に掲載した重要記事を収録しています。判例や法解釈は掲載当時のものです。
また、書籍「法律・建築のプロが選んだ!契約・敷地トラブル判例50選」から転載した「トラブル判例解説 契約・敷地編」も掲載しています。
付録
監理責任はどんなときに生じるのか。設計・監理者にとっては常に気になる問題だ。例えば「ヒマがあれば見回る」「監理はサービス」と発注者に伝えたとき、契約書に「監理責任は負わない」と明記したとき、どうなるのか。福田晴政弁護士に、監理を巡る様々な疑問に回答してもらった。
設計・監理者は無断で設計変更できるか CASE 50
別荘の実施設計を完成させた設計者に、発注者は気に入って監理も発注。そのとき発注者は設計者に「あとはすべて任せる」と明言した。そこで着工後、設計者は独断で一部の設計を変更し、竣工させた。すると発注者は、「設計変更には同意できない。やり直せ」と要求してきた。このとき、発注者の要求に応じる義務はあるだろう…
CASE 49
マンションの居室改装工事で受忍限度を超える騒音・振動が生じたとして、下の階の住民が発注者と設計者、施工者を相手取り、損害賠償請求の訴訟を提起。工事に使う道具によって騒音が発注することを十分、予測できたとして、裁判所は施工者と共に設計者にも責任ありと判断した。しかし、設計者は施工のやり方を施工者の裁量…
監理者の「指図」でも瑕疵担保責任認定 CASE 48
汚水管が天井内部に収まらなかったことから途中でT字型に変えたところ、事故が続発。発注者は瑕疵担保責任を理由に、請負会社を相手取って損害賠償請求訴訟を起こした。設計・監理者の指示に基づく変更だったことから、請負会社は民法636条を基に瑕疵担保責任はないとの主張を展開したが、裁判所は反論を退けて請負会社…
四会連合協定約款について聞く( 2 ) CASE 47
鉄骨造の建物に溶接不良などの瑕疵があるとして、発注者Yは設計・施工者だった建設会社Xを相手取り損害賠償請求の訴訟を提起。判決はYの請求額を約6割認めるものだった。Xの工事監理担当社員は溶接の施工者への指示を怠り、溶接方法が設計通りかを確認せず、監理者として不法行為をしたとされた。施工の瑕疵に対する監…
品確法施行で従来よりも重く10年に CASE 46
工事に瑕疵が見つかり、監理にもミスがあったとして工事請負人だけでなく監理者も同時に訴えられた。監理者の債務不履行責任は監理終了から10年が原則だが、裁判所は、それ以前に請負人の瑕疵担保期間が過ぎていたことから、監理責任は認めなかった。しかし、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(※)が施行されれば…
監理者に設計変更の代理権はあるか CASE 45
発注者と施工者の間で取り交わした覚書や請負契約約款の規定によって直ちに、監理者に対して変更工事契約を締結する代理権が与えられたことにはならない。監理者が発注者に無断で追加・変更を施工者に指示した場合、施工者は後日、発注者から追加・変更を否定され、損害を被る場合がある。ただし、施工者はその損害について…
工事の瑕疵を理由に損害賠償を請求 CASE 44
監理契約が成立するか否かは、契約書の表題や文言、当事者間で実際に取り決めた業務内容、業務への対価などを総合的に考慮して判断される。監理契約に基づく監理者の責任は、施工者の欠陥工事すべてに対する結果責任ではなく、施工者の補充的な責任である。監理契約が成立していたとしても、建築プロデューサーの責任は、典…
発注者も「予見できた」と判断 CASE 43
工事監理者が地質調査を行わず、工事請負人も地盤を軽視した施工を行った結果、隣接建物が損傷するなどの事故が生じれば、工事請負人はもちろん、建築士も隣接建物の居住者への賠償責任を負う可能性が高い。また、直接または間接的に工事を中止させることを怠ったとして、発注者の責任も問われることが少なくない。
CASE 42
第三者である隣地建物の所有者に対する責任が問題となり、隣地建物の損傷について、その一部に設計・監理者の責任が認められた事例だ。裁判所は、基礎工事による隣地建物の損害について、基礎工事の設計自体に問題があったことも重視して、設計・監理者の責任を認めた。
CASE 41
「工事監理」は建築士法上、工事監理者が工事の内容について、設計図書と照合して確認することだ。通常、設計者が設計図書で施工方法を指定しない工事内容について、工事監理者は責任を負わないとも言える。しかし、工事監理者の業務範囲は一般的にもっと広いと誤解されている。工事監理者はリスク回避のために、契約内容を…
監理者の説明不足などを指摘 CASE 40
監理者は工事の間、発注者と施工者の間に立って種々の調整をする役割がある。しかし、その役割がうまく機能せず、両者が契約の解除や工事の中止に至ることもまれではない。紹介する判例では、裁判の直接の当事者ではないが、各所に、監理者の不作為や説明不十分が厳しく指摘されている。当事者として責任を問われる可能性も…
監理者に工事遅延の責任を認める CASE 39
建物の完成・引き渡しの遅延について、監理者の責任が認められた珍しい事例を紹介する。ここで紹介する事例の監理者は、完成・引き渡し遅延時の報酬減額を約束していた。また、監理者の提案で採用した分離発注方式による工事のリスクなどについて、発注者に対する説明が不十分だと判断された。
損害賠償金の一部を支払う羽目に
一般的には、設計図書の記載内容に関する責任は設計者が、施工上の責任については施工者が負う。監理者は、設計の瑕疵に関する責任を負うわけではない。しかし、発注者は監理者の業務や責任の範囲を広くとらえがちだ。監理者が施工上および設計上の瑕疵について責任を問われた事例を紹介し、その業務や責任の範囲についてあ…
過失に基づく損害で賠償義務を負う CASE 37
施工された工事を設計図書と照合するという監理者の職責と、工事前や工事中に現場を指導・監督する工事監督の職責を取り違えて、監理者に賠償責任を求める例が多く見受けられる。ある住宅の瑕疵に関する裁判で、訴えた発注者だけでなく、裁判官や訴えられた監理者さえも、監理者に責任はないのに「責任がある」と誤解してい…
求められる設備設計上の工夫 CASE 36
分譲マンションの天井裏の排水枝管に漏水事故が発生。排水枝管が専有部分か共用部分かが責任問題に関する訴訟の焦点となった。一審、二審とも裁判所は排水枝管を共用部分と判断した。一審では枝管を含めた天井裏が共用部分とされ、二審では天井裏は専有部分だが、枝管は排水本管と一体化したもので共用部分だとされた。
CASE 35
飲食店の入り口に設置した自動ドアに衝突してけがをした客が、損害賠償を求めて飲食店の経営者を訴えた。裁判所は、安全を確保する措置を講じていなかったとして、自動ドアに瑕疵があったと判断した。自動ドアの設置工事を担当した建設会社や専門工事会社に対して、飲食店の経営者が責任を追及する行動に出ることも予想でき…
「設計者に落ち度」と判断 CASE 34
採用したタケ集成材にかび、ゆがみ、虫害が発生。建築主は損害賠償を求めて設計者を訴えた。建材選択時の設計者の注意義務違反を問う裁判だ。あまり一般的でない材料は、メリットやデメリットが予見しにくい。トラブルを避けるためには、メーカーの説明を真に受けるだけでなく、事前の調査を尽くして建築主の理解を得ること…
瑕疵の判断基準に変化の兆し CASE 33
建築物の瑕疵を巡る紛争では、発注者側が法令違反や図面との違いを指摘するのに対して、設計者や施工者側は、建物は実質的に安全で問題がないと主張する傾向がある。しかし裁判所は近年、その判断基準を、発注者側が主張する法令違反や図面との違いにシフトさせ始めている。最近の判例を基に、裁判所の瑕疵に対する考え方を…
瑕疵の有無、工事の完成などを争う CASE 32
2階建ての自宅の建築を依頼した建築主が、希望した車庫に車を入れるのが困難など、工事に瑕疵があるとして工事請負人を訴えた。ほかにも、工事の「完成」や、瑕疵と発注者の指示との関係を争うなど、一つの裁判で様々な論点を提供している。裁判所は、瑕疵の存在を認め、さらにその前提となる工事の完成は済んでいると判断…