2016年11月11日、東京・江東区の木材会館で「木材活用フォーラム2016」が開催された。会場では、「中高層建築への木材利用促進の可能性について検討する研究会」の活動報告を兼ねて4つのセッションを行い、多くの聴講者を集めた。セッションの最初のテーマは、「ここまで来た!中大規模木造の技術と法制度」。同研究会を主催した日経BPインフラ総合研究所上席研究員の小原隆の司会で研究会のメンバーらが報告と議論を行った。

(写真:菊池一郎)
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  • 【登壇者】
    • 中大規模木造プレカット技術協会 監事 藤田譲氏
    • 竹中工務店 木造・木質建築推進本部副部長 小林道和氏
    • KUS 代表取締役、チーム・ティンバライズ 理事 内海彩氏
    • 林野庁 林政部 木材産業課 木材製品技術室 住宅資材技術係長 原章仁氏
  • 【モデレータ】
    • 日経BPインフラ総合研究所 上席研究員 小原隆
 
日経BP社 日経BPインフラ総合研究所 小原隆(写真:菊池一郎)
日経BP社 日経BPインフラ総合研究所 小原隆(写真:菊池一郎)
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小原(日経BPインフラ総合研究所):セッション1のテーマは「ここまで来た!中大規模木造の技術と法制度」だ。セッションを始める前に、日経BPコンサルティングが行った木造・木質建築について、設計者やゼネコン、デベロッパーを対象にしたアンケート結果を紹介したい。

 1つ目は、木造・木質建築の設計や施工の経験、関心の有無についてだ。木造・木質建築について「経験あり」が約75%、経験はないが「関心あり」が約22%だ。一方「経験・関心なし」は、わずかに約3%。今、木造・木質建築に対して、かなりの人が関心を持っている。

木造・木質建築への関わり(資料:日経BPコンサルティング)
木造・木質建築への関わり(資料:日経BPコンサルティング)
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 2つ目は、木造・木質建築の普及への課題について聞いた。上位には、「耐火性能が低いこと」「法規制が多いこと」「施工できる人材不足」などが課題として指摘されている。

木造・木質建築の普及への課題(資料:日経BPコンサルティング)
木造・木質建築の普及への課題(資料:日経BPコンサルティング)
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 3つ目には、実際に木造・木質建築を経験した方を対象に、「企画したものの実現せず」と回答した人に、どのような阻害要因があったのかを聞いた。上位は、「予算間が見合わなかった」「コストを精査したところ予算内に収まらなかった」といった回答だ。コストの課題に次いで「防耐火の法令上の課題」「規模や構造上の課題」が挙がっている。

【経験あり層】「企画したものの実現せず」の阻害要因(資料:日経BPコンサルティング)
【経験あり層】「企画したものの実現せず」の阻害要因(資料:日経BPコンサルティング)
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 アンケートによると、木造・木質建築に取り組むに当たっての課題があることが分かった。そこで、日経BP社インフラ総合研究所では「中高層建築への木造利用促進の可能性について検討する研究会」を組織してこうした課題をあぶりだし、実際にどうやって解決していけばいいのかを、木造・木質建築に関わる実務者に集まってもらい、研究を進めてきた。