家づくりの経緯を書いた建て主のブログを見ていると、“施主支給”という言葉をよく目にする。施主支給とは、建て主が自分で建材・設備を直接購入し、施工者には取り付けだけを依頼するものだ。

 施主支給の場合、製品購入にかかわる施工者の利益分がなくなるので、コストを低減できる可能性がある。在庫品や展示品などの“掘り出し物”が見つかれば、さらなるコストダウンが可能になるかもしれない。しかし、製品を選定したり納期を調整したりする手間は生じる。契約に際し、工事の責任範囲や保証を明確にしておかないと、後々問題になりかねない。製品にクレームが発生すれば、建て主自らが対処しなければならないリスクもある。これらを考えると、施主支給に大きなメリットがあるとは言い切れない。

 それでも施主支給はもてはやされている。なぜだろう。その背景には、建て主が抱く、設計者や施工者への不信感があるのではないだろうか。

 最近の建て主は勉強熱心だ。インターネットにはさまざまな情報が網羅されており、自由に閲覧できる。建て主はそこから入手した情報で理論武装し、家づくりを発注する設計者や施工者がパートナーにふさわしいかどうかを見極めようとしている。

 プロはその責務として、建て主が建材・設備の採用の可否を判断できる客観的な材料を提示しなくてはならない。建て主も、豊富な経験を持つプロならではの提案を期待している。それなのに、たとえば建て主に判断を全面的に委ねたり、好き嫌いなどの主観を押し付けたりしていては、建て主は不信感を募らせるばかりだ。

 建て主との打ち合わせで施主支給が話題に上ったら、どうして施主支給を要望するのかを聞いてみてはどうか。建て主の思いが見えてくるはずだ。なかには、家づくりに参加したい一心で、施主支給を口にしている建て主がいるかもしれない。だが、もし不信感を抱かせているようなら、早急に建て主との信頼関係を築き直すべきだろう。