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建設3次元まつり2009

「3次元熱流体解析:WindPerfect(環境シミュレーション)」

ベトナムに冷房不要のビルが次々と登場
手品のように風を導くWindPerfectの威力

CAt

建物内部を吹き抜ける気流をWindPerfectで解析

日本よりはるか南のベトナム。北緯10度45分の熱帯地域に位置する灼熱のホーチミン市で、冷房なしのオフィスビルや大学が次々と設計されている。例えば、ホーチミン建築大学。マングローブの林と共生するように、なだらかな曲線で構成された校舎が同心円状に配置されている。

建築や都市、土木など6学部からなるキャンパスは、中央部分に全学の共通科目を教える校舎、それを囲むように専門別の校舎がつながって配置されている。驚くべきことに、これらの校舎は冷房が必要ない設計になっているのだ。

マングローブの林と共生するように配置されたホーチミン建築大学のキャンパス

マングローブの林と共生するように配置されたホーチミン建築大学のキャンパス。建物は3次元熱流体解析ソフト「WindPerfect」により風通しよく設計されたため、冷房設備はない
(以下の画像:CAt)

この“究極の省エネキャンパス”を設計したのは、東京・恵比寿に本社を置く建築設計事務所、CAtだ。

「キャンパスや校舎の中をまんべんなく風が通り抜けるように、3次元熱流体解析ソフト『WindPerfect』を使って設計を何度も検証しました。校舎の配置や窓などの開口部の位置、キャンパス内の樹木の配置などの検討です」と、同社パートナーの小嶋一浩さんは説明する。

「単純な建物であれば、ある程度、経験と勘で設計できますが、ホーチミン建築大学のように複雑なかたちになるとCFD、すなわち熱流体解析ソフトによる検証が欠かせません」(同)。

CFDソフトにはいろいろな製品が市販されているが、WindPerfectを選んだのはプレゼンテーション力を評価してのことだ。目に見えない気流や温度分布などの解析結果をビジュアルにCGや動画で表現してくれるので素人にもわかりやすく、施主に対しても説得力がある。これが導入の決め手になった。

シーラカンス アンド アソシエイツ バートナーの小嶋さん(左)。「WindPerfect」による解析結果を元にキャンパス内の風の流れを表現したプレゼン資料

CAt パートナーの小嶋さん(左)。「WindPerfect」による解析結果を元にキャンパス内の風の流れを表現したプレゼン資料

建物内部を3次元的に吹き抜ける気流をWindPerfectで解析し、すみずみまで風通しを確保することで冷房を不要にした

建物内部を3次元的に吹き抜ける気流をWindPerfectで解析し、すみずみまで風通しを確保することで冷房を不要にした

「どんな手品を使ったのか」と驚くほどの風通し

WindPerfectは、環境シミュレーションが開発した建築・土木業界向けの3次元熱流体解析プログラムだ。建物内外や市街地における温熱環境や空調、換気、風環境などを構造物や地形などの3次元モデルに基づいて、パソコンで解析することができる。

建築、土木業界では最近、設計に3次元CADが広く使われるようになってきたが、そのCADデータをそのまま取り込んで解析できるので、熱流体解析のためだけに3次元モデルを作り直す必要がなく、解析結果に従って設計を修正することも簡単だ。

その結果、建設中や完成後にビル風問題や輻射熱で温度が高くなりすぎる場所が出るなど、予想外の問題も発生を抑えられるようになり、顧客満足の高いプロジェクトが実現できるのだ。建築では、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用して問題点をプロジェクトの初期段階に解決しておく「フロントローディング効果」が注目されているが、まさにそれを実践するためのソフトなのである。

2000年に手がけたハノイの旧市街地再開発プロジェクトでCFDの効果を実感したという小嶋さん
2000年に手がけたハノイの旧市街地再開発プロジェクトでCFDの効果を実感したという小嶋さん

東京理科大学の教授でもある小嶋さんが熱流体解析ソフトの威力を実感したのは、ベトナムの首都、ハノイの旧市街地の再開発のためのモデルの開発に参画していた2000年にさかのぼる。100メートル四方に1000人が住むという人口密集地区で、実際に集合住宅を建て替えるプロジェクトに、住宅を「スペースブロック」という単位から、組み上げる方式を採用した。

「このような構造にすると、通風用のすき間が立体的に取りやすいのです。屋根は二重式にして、その中を風が通り抜けるようにしました」と小嶋さん。

しかし、ここで問題になったのはプライバシー確保の問題だった。せっかく、風通しがいいように開口部を設けても、プライバシー上の理由でふさがれてしまうと、意味がなくなってしまう。そこで、風通しとプライバシー確保という、相反する課題を解決するため、CFDソフトを使って風の流れを解析し、空気の新鮮さを表す「空気齢」という指標を手がかりに設計を改善していった。

「完成した建物は、延べ床面積466m2、空隙率が約50%にもなりました。一番奥にある部屋でも、風通しがいいことが実感でき、現地のベトナム人からは『いったい、どんな手品を使ったのか』と聞かれるほどでした。このプロジェクトでCFDでの解析結果が実証されたことをきっかけに、CFDの活用に自信がもてるようになりました」と小嶋さんは振り返る。

設計者自身が熱流体解析を行えるWindPerfect

同社は、ホーチミン市内に建設するサイゴン解放新聞社のオフィスビルでも、冷房が必要ない設計を行った。ビルの壁面に水を流し、その蒸発熱で周囲の空気温度を下げる一方、建物内部は自然換気により「紙が飛ばない程度の風速」で風が通り抜けるような設計にしたのだ。

「オフィスビルなどは、単に風通しがいいだけでなく、仕事に使う紙などが飛ばされないように風を制御する必要もあります。また、オフィスの内部に暑い部分ができてもいけません。こうした定量的な風通しを検証できるのも、WindPerfectというソフトがあってのことです」と小嶋さんは説明する。

同社ではWindPerfectを使って、風の弱い熊本県宇土市に建設する宇土市立宇土小学校や、風の強いシルクロード地域に建設する中央アジア大学(UCA)の3キャンパスの設計も行っている。

ホーチミン市に建設されるサイゴン解放新聞社のビル。風通しをよくして冷房を不要とする一方、風速が大きくなりすぎないようにWindPerfectで気流を解析しながら、設計を進めていった

ホーチミン市に建設されるサイゴン解放新聞社のビル。風通しをよくして冷房を不要とする一方、風速が大きくなりすぎないようにWindPerfectで気流を解析しながら、設計を進めていった

模型の前で設計内容を検討するシーラカンス アンド アソシエイツのスタッフ
模型の前で設計内容を検討するCAtのスタッフ

建物の空調によるCO2排出量は、自動車や飛行機などの交通機関からの排出量よりも多いと言われ、地球環境保護問題を改善していくうえで建築家の果たすべき役割は重要だ。

パソコンの高性能化、低価格化に伴って、従来はスーパーコンピューターなどを使って専門家が行っていた熱流体解析を、建築家自身の手で、手軽に行えるようになり、熱帯地方でさえ「冷房なし」というオフィスビルが設計できるようになった。

WindPerfectの開発元である環境シミュレーションのスタッフ。右から営業担当の佐藤登喜生さん、代表取締役の阪田升さん、総務・Web担当の村上久美子さん
WindPerfectの開発元である環境シミュレーションのスタッフ。右から営業担当の佐藤登喜生さん、代表取締役の阪田升さん、総務・Web担当の村上久美子さん

3次元でしかも熱流体解析用のソフトというと、使い方をマスターするのが大変だと思う人も多いかもしれないが、環境シミュレーションでは初心者向けに3日間でソフトの基本操作をマスターできる講習を設けている。

同社の代表取締役を務める阪田升さんは、「1日、5〜6時間程度の講習を3日受けてもらうだけで簡単に使えます。1日目は解析結果の可視化、2日目はデータ入力、3日目は実際の問題を解くというカリキュラムです。その後も、電話サポートや毎月開催する無料相談会があります」と説明する。

パソコン用のソフトにもかかわらず、最大で500万グリッド規模の解析が行える。空間をメッシュに分割する作業も自動で行えるほか、太陽光に日射熱量計算や輻射計算、そして壁面に付着する結露のシミュレーションなど、本格的な機能を数多く備えているのだ。

これから、ますます競争が激しくなる国内の建設市場で勝ち抜き、海外物件も積極的に受注していきたいと考える建築設計者、土木技術者は、3次元熱流体解析ソフト「WindPerfect」を差別化や競争力の源泉として使っていきたいものだ。


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建設分野のあらゆる温熱環境解析、風環境/風荷重解析などが可能な3次元熱流体解析ソフト

製品についてのお問い合わせ先
株式会社環境シミュレーション 企画営業部

tel. 03-5823-3561〜3
mail. info_e-sim@env-simulation.com
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