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【連載:不動産テック】クラウドファンディング(2):WTC再建へ活用

2016/09/06

近年、不動産開発・投資の資金調達手法が多様化している。ワールドトレードセンターの再開発では、事業費25億ドルの一部をクラウドファンディングで調達。米国最大の不動産開発ハドソンヤードでも、1200人の外国人投資家から6億ドルの出資を集めることに成功した。

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(前回から続く)

 クラウドファンディングのブームを見越して、いち早く提携の動きに出た大手デベロッパーがいる。ニューヨークを拠点に国内外で延べ床面積900万m2以上の不動産を開発しているSilverstein Propertiesである。

 同社は、クラウドファンディングを将来の重要な資金調達手法として位置付けて、2014年5月にFundriseに対して3100万ドルを出資。翌年1月には、Silversteinが2018年の竣工をめざして開発中の3ワールドトレードセンターの資金の一部をFundriseで募集した。これは2011年の同時多発テロで破壊された世界貿易センター(WTC)の再建プロジェクトの一環で、ビルの総事業費25億ドルのうち、200万ドルのシニアデットを最小投資単位5000ドル、グロスIRR5.0%(年間手数料0.15%)、投資期間5年の投資商品に仕立てた。

 さらに2015年12月には、Silverstein とFundriseは1000ドルから投資できる非上場型モーゲージREIT(不動産担保ローンを資産とする不動産投資信託)を設立し、5000万ドルの投資口を募集することを公表した。個人投資家にも機関投資家と同様に非上場型REITへの投資を可能にし、低い管理手数料や、投資口価格変動リスクの最小化といったメリットを提供するものだ。また、通常のクラウドファンディングがそれぞれのプロジェクトに対して投資家を毎回募るのに対し、後者はFundriseがチョイスした複数のプロジェクトに対して投資するため、リスク分散が期待でき、個人投資家の裾野をさらに広げることが予想される。

3ワールドトレードセンターの投資募集サイト(https://fundrise.com/offerings/45/view

移民ビザを開発資金にする大手デベロッパー

 一方、全く異なる手法で不動産開発の資金を集める動きもある。米国最大級の不動産開発であるハドソンヤードでは、2014年に不動産開発大手Relatedが約1200人の外国人投資家から6億ドルの資金を調達することに成功した。また、前述のSilversteinも2015年、2ワールドトレードセンターの建設のために約1000人の外国人投資家から5億ドルを調達した。いずれも、米国永住権と引き換えにインバウンド投資を促進する制度「EB-5ビザプログラム」を活用したものである。

 この制度は、国内の雇用創出を促進するために1993年から開始された。資金を調達したい企業は、所定の審査の上で各地の移民局事務所(リージョナルセンター)に登録する。対象となる事業は、医療、福祉、飲食サービス、エネルギー、教育など多岐にわたるが、不動産開発が全体の約7割を占めている。永住権を取得したい外国人投資家は、連邦政府が認可したこれらの事業に対して、50万ドル以上を投資することが求められている。

 EB-5ビザの申請件数は年々増加しており、2015年には1万8145名が応募し、第3四半期までに32億4900万ドルを集めた。2015年の申請者のうち87%は中国人投資家であり、次いで、韓国やインドなどそれ以外のアジア系投資家が6%を占めている。投資対象地域は、外国人投資家にも人気のあるニューヨーク(22%)、フロリダ(18%)、カリフォルニア(14%)となっている。

急増するEB5ビザによるインバウンド投資(注:USCIS資料より筆者作成)

 この資金は一般的に3%~4%の金利で調達できたため、通常のメザニンデットの金利水準(10%程度)と比較して、とても魅力的な資金調達手段となってきた。しかし近年、資金調達を希望する企業が増加しているため、リージョナルセンターの管理手数料が上昇傾向にあり金利水準は7%を超える水準に達している。

 実は、リージョナルセンターは民間企業が政府に登録して設立することも可能だ。そのため、一部の企業ではEB-5ビザの申請受付事務に特化したリージョナルセンターを自ら設立し、個人投資家を直接募集する動きが見られる。前述の2社もRelated EB-5 Regional CentersとSilverstein Properties Regional Centerというリージョナルセンターを設立し、多くの中国人投資家を呼び込んでいる。

EB-5ビザプログラムによる資金調達ランキング(2016年6月時点)(注:各種公表資料より筆者作成)

 このように米国では、デベロッパーがクラウドファンディングやEB-5ビザといった新たな資金調達手法を内包化する動きが増えてきており、今後も多くの不動産開発や投資において活用されるものと予想される。

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北崎 朋希=不動産アナリスト日経不動産マーケット情報

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