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【連載:不動産テック】クラウドファンディング(1):急増する調達資金

2016/09/05

近年、不動産開発・投資の資金調達手法が多様化している。ワールドトレードセンターの再開発では、事業費25億ドルの一部をクラウドファンディングで調達。米国最大の不動産開発ハドソンヤードでも、1200人の外国人投資家から6億ドルの出資を集めることに成功した。

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 米国では以前、企業が証券取引委員会の登録なしに有価証券を発行して資金調達する場合、資金提供者は適格機関投資家などに限定されていた。しかし、2012年4月に制定されたJOBS法(Jumpstart Our Business Startups Act)によって、個人投資家も同手法を用いて投資することが可能となった。

 これにより、インターネットを活用して小口の資金を集めるクラウドファンディングの利用可能性が飛躍的に拡大した。具体例としては、商品化前の製品のアイデアを公開し、エンドユーザーから開発資金を募るKickstarter(キックスターター)があまりにも有名だが、不動産取得や開発資金の調達においても、クラウドファンディングは急速にその勢力を拡大している。英ケンブリッジ大学による調査によると、米国には既に125以上の不動産系クラウドファンディングのサイトが開設され、2015年は4億8000万ドルの資金が同手法によって調達された。

不動産に特化したクラウドファンディングの出現

 米国で最も早く不動産系クラウドファンディングを立ち上げたのが、ワシントンDCで不動産会社を経営する父の下で育った二人の兄弟が設立したFundrise(ファンドライズ)である。

 彼らは、衰退しているワシントンDCのHストリート北東地区を再生させるため、家族や友人から集めた資金で約50年間放置されてきた2階建てのレンガ造の店舗を2011年に購入した。この店舗をミレニアル世代が好むヒップなデザインに改修して魅力的なテナントを誘致するため、この事業に賛同する投資家を集めることを開始した。しかし、当時は個人から資金調達するには証券取引委員会への登録が必要だったため、彼らは弁護士とともに約1年間を費やして資金調達に必要な許認可を取得した。

 この新たな取り組みは地区内外で注目を集めるようになり、興味を持った住民などが次々と100ドルから1万ドル単位で出資し、約2年間で175名の投資家から32万5000ドルを集めることに成功した。そして、この資金に銀行融資を加えて改修工事を実施し、2015年4月にレストラン、カフェ、アパレルショップなどが入居する商業施設MAKETTOとして開業するに至った。Fundriseは、この改修事業で年間利回り8.4%を目指しており、投資金額の約0.5%を管理手数料として徴収している。

コミュニティ再生を理念に掲げるMAKETTO(http://maketto1351.com/about/

 第一号物件の資金調達が完了した後、Fundriseは新たな案件を探すため、全米の不動産会社との提携を開始し、5000万ドルから1億ドル程度の資金を必要とする中小規模の不動産開発の資金調達を次々と手掛けていった。そして設立から3年間でFundriseは約5億3000万ドルの資金調達に携わるまでに拡大し、平均13.0%の配当利回りを達成した。この水準は米国の主要株価指標であるS&P500やNASDAQ Composite、米国REITの投資口指標であるNAREIT Compositeを大きく上回る水準である。

 同社の投資エリアは、拠点を置くワシントンDCのみならず、ニューヨーク、シアトル、ロサンゼルスまで拡大し、対象アセットも賃貸住宅、分譲住宅、オフィス、店舗と様々な案件を取り扱っている。また投資形態も出資のみならず、メザニンデットやシニアデットも取り扱っており、幅広い資金調達ニーズに対応することが可能である。投資期間は約7割が1〜3年であり、大部分は5年以下と不動産開発や改修の初期段階をターゲットしている。

Fundriseの投資実績(金額ベース)(注:Fundrise資料から筆者作成)
想定利回りやリスクなどの詳細な情報が確認可能(https://fundrise.com/offerings/64/view

数億ドルの資金調達に成功するクラウドファンディング

 不動産系クラウドファンディングの中には、数億ドルの資金調達に成功するものも現れている。ニューヨークに拠点を置くProdigy Networkは、米国東海岸にある住宅を南米の個人投資家に販売する会社として2003年に設立された。しかし、2008年の金融危機によって住宅販売は失速。代わりに、より安定性の高いオフィスやホテルへの投資に個人投資家を結びつけるクラウドファンディングビジネスを検討したものの、JOBS法の運用前であったために米国での事業化は難しかった。

 転機となったのは2009年。創業者の出身地であるコロンビアで開始したプロジェクトだ。同社は、スペインの不動産会社が首都ボコタで67階建ての複合施設の開発を計画しており、地元の金融機関から建設に必要な2億5000万ドルの資金調達ができずに困っていることを知ると、個人投資家から建設に必要な資金を集めることを提案した。このクラウドファンディングは、約3年間で3950名の投資家から1億9000万ドルを集めることに成功し、国内外から大きな注目を集めた。

総事業費の約8割をクラウドファンディングで集めた複合施設BD Bacata(http://www.bdbacata.com/

 2013年9月、JOBS法の運用に必要な施行規則の公表を見越して、同社ではニューヨーク初となる不動産系クラウドファンディングを、ロワーマンハッタンの長期滞在者向けホテル、AKA Wall Streetで開始した。この開発では、建設に必要な1億7000万ドルのうち3100万ドルのエクイティファイナンスを、最小投資金額1万ドル、投資期間1年〜2年、目標IRR16%〜19%という条件で募集した。その結果、15カ月間で目標募集額を上回る4200万ドルを14カ国の投資家から集めることに成功し、2016年6月に同ホテルは開業した。

4200万ドルをクラウドファンディングしたホテルAKA Wall Street(写真:北崎 朋希)

 現在、同社では自ら物件を取得して改修や開発を手掛けており、2015年には同じくロワーマンハッタンにある歴史的建造物、17 John Streetを取得するために、8530万ドルの取得費用のうち3800万ドルのエクイティファイナンス(最小投資金額1万ドル、投資期間3.5年〜4.5年、目標IRR16%〜19%)を成功させた。さらにこの物件をホテルやコラボオフィスに改修するため、改修費用として1000万ドルのエクイティファイナンス(最小投資金額2万ドル、投資期間2年〜3年、目標IRR15%〜17%)も募集した。コラボオフィス部分では、すでにWeWorkが賃借意向を示しており、大きな話題を集めている。

歴史的建造物の取得と改修費用を分けて資金調達した17 John Street(https://www.prodigynetwork.com/en/properties.aspx

 クラウドファンディングのブームを見越して、いち早く提携の動きに出た大手デベロッパーがいる。ニューヨークを拠点に国内外で延べ床面積900万m2以上の不動産を開発しているSilverstein Propertiesである。

(次回に続く)

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北崎 朋希=不動産アナリスト日経不動産マーケット情報

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