会議参加者であふれかえる街角。右手が展示会場のパレ・デ・フェスティバル(写真:本誌)
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会場を多くの不動産関係者が行き交う(写真:@MIPIM_World)
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EUの存続に悲観的な英オックスフォード大学Andrea Boltho教授(写真:本誌)
EUの存続に悲観的な英オックスフォード大学Andrea Boltho教授(写真:本誌)
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14日のパネルディスカッション「World Overview: What are the global indicators saying?」の様子(写真:@MIPIM_World)
14日のパネルディスカッション「World Overview: What are the global indicators saying?」の様子(写真:@MIPIM_World)
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 地中海らしい晴れやかな日差しに恵まれた南仏カンヌのMIPIM(ミピム)会場には、久しぶりの出会いに笑顔を交わす、人々のにぎやかな声がこだましている。午後5時も過ぎれば通りという通りに人々があふれ出し、たちまち街はパーティー会場の様相を呈する。日常の慌ただしさなど、どこか遠い世界の出来事のように忘れてしまいそうな雰囲気だ。

 ただし、このお祭り騒ぎの中にいても、浮かれた気分になりきれない不安を皆がどこかに抱えている。不動産関係者やジャーナリストと言葉を交わせば、二言目には口に上るのが政治の話題である。「トランプ」と「ブレクジット」ーー。昨年世界を揺るがせた二つの政治イベントが、10年、20年先のキャッシュフローを予測して投資することをなりわいとしてきた、不動産関係者のセンチメントに与えたインパクトは計り知れない。

 3月14日の「World Overview: What are the global indicators saying?」と題したパネルディスカッション。悲観的なシナリオを示したのは、英オックスフォード大学のAndrea Boltho(アンドレア・ボルト)教授だ。南北欧州の経済格差が加速的に拡大している現状に触れ、「EU(欧州連合)が10年後に存在しているかどうかもわからない」と悲観的なシナリオを示した。

 トランプ大統領の言動はこのカンヌでも必ず話題に上るが、再選されないとすれば「4年間の任期限りの出来事だ」(英国のジャーナリスト)。これに対して、より長期的な影響が続くのはブレクジットのほうだとみられている。メイ首相は13日、野党の反対を押し切って、離脱条項(欧州基本条約第50条)批准に向けた下院投票に勝利。EU条約に代わる貿易協定などが用意されないまま離脱を迎える“ハード・ブレクジット”の可能性がしばしばスピーカーたちの口に上る。

 カンヌを訪れている英国の住宅会社によれば、ロンドン中心部の住宅取引は以前より3割も減少。新築住宅の着工件数に至っては半減した。ブレクジットの影響に対する不安が広がったのに加え、不動産登記税の引き上げなど政府の投資抑制策が影響したという。今のところオフィス賃貸市場はIT企業の増床などで持ちこたえているというが、現地の国際企業は先の見えない状況に浮き足立つ。

 こうした不安に追い打ちをかけているのが、欧州大陸の方で予定される政治イベントの行方だ。まずはこの15日に実施されるオランダ下院選挙では、移民排斥とEU離脱を主張する極右政党が伸張していることが伝えられている。

 地元フランスでは、やはり排外的な主張を繰り返す野党のルペン党首が中道系のマクロン候補と人気を競っていることが伝えられており、4月23日から始まる大統領選挙で勝利する可能性が現実味を帯びる。イギリス国民投票が口火を切ったポピュリズムと反EUのうねりは、大国フランスを巻き込んで、EUの存在自体を決定的な分岐点に立たせている。

本間 純=仏カンヌ