来る2017年の注目国の一つは、なんといっても米国。大統領選期間中とは打って変わって、トランプ新政権の経済政策に対する期待が高まっています。米国ではITが重要な産業であることは言わずもがな。トランプ氏は折につけIT業界を攻撃し、IT業界もそれに応戦してきましたが、12月14日、トランプ氏がトランプタワーに大手IT企業幹部らを集め産業支援の方針を伝えたことで、雪解けに向けて動き出すかもしれません。

 米国ではITで新たなビジネスモデルを生み出そうとする「スタートアップ」企業がわんさかとあり、不動産の世界でもそれは例外ではありません。日経不動産マーケット情報2017年1月号の特集では、そんな不動産ITスタートアップが集積するニューヨークの現地取材を行いました。日本でも注目を集める「不動産テック」ですが、かの地では二歩も三歩も先を進んでいます。不動産テックの最新動向を本特集でぜひご確認ください。なお、本誌が過去にウェブサイトに掲載した不動産テックの連載をお読みになると、状況が一層鮮明になります。

 さてITの発達によって、人々のワークスタイルは大きく変わりつつあります。加えて日本国内の労働力人口はピークアウトし、この先の需要について弱気の意見が目立ちます。にもかかわらず、東京では大規模ビルの供給が止むことはありません。1月号のトピックスでは、こうしたミスマッチの問題について解説しました。同じ号で、不動産アナリスト16人を対象にしたオフィス市況の予測調査を掲載しているのですが、こちらでも大量供給を背景にオフィス市況が軟化する予想が強まっています。ぜひ併せてご覧ください。

 売買レポートでは、松屋が銀座本店の一部を110億円で取得し、建物全体を所有した事例や、三井物産とイデラ キャピタルマネジメントによる1000億円規模のREIT(不動産投資信託)上場、クレディ・スイスによる大阪・梅田への160億円の投資など、22事例を掲載しました。これらを含む取引事例121件を一覧表にまとめています。

 今国会では、IR(統合リゾート)推進法案が可決されました。IRではカジノだけでなく、ホテルや商業施設、飲食施設、コンベンション施設、シネマコンプレックスなど多様な施設を整備することになります。ギャンブルに対する反対意見は多数ありますが、多くの人を引き付けるビッグビジネスとなり、多数の雇用を生み出すことは間違いありません。不動産業界にとっても関連のビジネスチャンスが広がります。実現に向けては様々なハードルが立ちはだかっており、近隣国にも強力なライバルがそろっていますが、東京五輪後の注目プロジェクトの一つとなるかもしれません。

三上 一大