「ホテルが足りない」と言われて、はや数年。この間、東京や大阪といった大都市では数多くのホテル開発プロジェクトが浮上し、今なお増え続けています。日経不動産マーケット情報2017年8月号では、東京と大阪のホテル開発計画を徹底的に調べ、特集にまとめました。計画されている客室数を積み上げたところ、東京(都心10区)は2万6400室、大阪市は2万2000室と、ちまたで言われる供給量を上回る結果に。東京では既存ストックに対して26%の増加となります。観光立国をめざす政府の思惑通り、訪日外国人旅行者数は順調に伸びてきましたが、果たして需給は見合うのでしょうか。エリアを絞った分析も行いましたので、特集でぜひご確認ください。

 8月号では、四半期に一度行っている売買事例分析も掲載しました。今回は2017年第2四半期(4月~6月)が対象で、売買高は8227億円と3四半期連続で前年を上回りました。リードしたのは外資系企業。逆にREIT(不動産投資信託)は存在感を薄めました。当期は都心をやや外れた地域での取引が目立ち、天王洲では大型ビル3棟の取引が相次ぎ判明。そこで、過去に遡って同エリアでの価格の推移を分析しました。このほか取引されたビルのNOI利回りなども推定しています。

 同じく四半期ごとの成約賃料調査では、大阪の堂島・中之島エリアで価格上昇が確認できました。一方、東京ビジネスエリアでは空室率が3%を切っているにもかかわらず、成約賃料にはほとんど変化が表れません。なぜ明確な貸し手市場にならないのか。その理由を解説しましたので、本誌でご確認ください。

 売買レポートでは、ブラックストーンが中国の安邦(アンバン)保険集団に売却した2600億円のポートフォリオや、三菱商事系の私募REITが取得した銀座の商業施設、ジャパン・ホテル・リート投資法人による大型ホテル3棟の取引など、21事例を収録。これらを含む取引事例121件を一覧表にまとめました。企業移転ニュース欄では、赤坂インターシティAIRで1万坪以上を借りるNTTドコモや、大阪の中之島フェスティバルタワー・ウエストに入居するアサヒビールなどを紹介しています。

三上 一大