EU離脱をめぐる英国民投票から3週間。株式・為替市場は落ち着きを取り戻し、一時は1700台に落ちた東証REIT(不動産投資信託)指数も1900をうかがう水準に回復しました。REITをめぐっては近年、新たな立ち上げの動きが続いています。今年に入ってからはイデラ リート投資法人、森トラスト・ホテルリート投資法人、マリモ地方創生リート投資法人、三井不動産ロジスティクスパーク投資法人、D&Fロジスティクス投資法人、さくら総合リート投資法人、DBJプライベートリート投資法人、ニッセイプライベートリート投資法人、大江戸温泉リート投資法人、京阪プライベート・リート投資法人の10法人が、5月までに国への登録を完了しました。

 カネ余りと金利低下のなか、有望な投資先を探して漂流するマネーの受け皿になることが期待される不動産ですが、足元の流通状況はやや軟調。直近の四半期(4月~6月)の不動産取引高は前年同期比マイナスで、これで4四半期連続の前年割れとなりました。日経不動産マーケット情報2016年8月号で、売買市場の動きを細かく分析していますので、今後の市況を見通す材料としてご活用ください。

 8月号の特集はオフィス賃貸借のトラブルです。ここ数年、オフィスの原状回復工事費をめぐり、テナントとビルオーナーが対立するケースが目立つようになりました。背景にあるのは建築費の高騰で、例えばSRC造の建築費はここ3年間で4割ほど上昇しました。しかし一部のビルにおける原状回復費の上昇はその比ではなく、2倍になったケースもあるそう。いくらなんでも高すぎだと訴訟に発展する事例も出ています。こうしたトラブルはビルオーナー、テナントの双方にとって不幸なこと。特集では、こうした動向について解説するとともに、トラブルを未然に防ぐ知恵を掲載しています。市況を報道している本誌には珍しいタイプの記事ですが、オフィスを取り巻く環境が変化するなか、テナント満足度を高める参考になればと思います。

 空室率が4%を切ろうかという東京都心5区のオフィス賃貸市場ですが、仲介の現場に聞くと、賃料水準にはほとんど変化がないように感じられるそうです。しかし半年なり1年なりのスパンで振り返ってみると、実際には緩やかに上昇しています。「実感無き上昇」が、いまのオフィス市況といえるかもしれません。8月号の成約賃料調査で、こうした状況を解説するとともに、東京22エリア、神奈川2エリア、大阪4エリアの成約水準グラフを掲載しています。ウェブサイトにもより詳細なグラフを掲載する予定ですので、併せてご覧ください。

 売買レポートは、三井不動産が一棟所有とした六本木ティーキューブや、ドイツ銀行が90億円で取得したフォーキャスト堺筋本町、関電不動産開発による相互半蔵門ビルディングの取得など20ケースを掲載。これらを含む取引事例142件を一覧表にまとめています。

 なお日経BP社では、7月20日(水)~22日(金)の会期で、「インバウンド・ジャパン2016」を開催します。訪日外国人4000万人時代に向けてビジネスチャンスをつかむためのイベントで、事前登録すれば入場は無料。会場は江東区有明の東京ビッグサイトです。ぜひ足をお運びください。

三上 一大