歴史的な低金利を背景に、東京都心では開発事業のペースが加速しています。例えば住友不動産は、このたび策定した2016年4月~2019年3月の中期経営計画において、22万坪に上るオフィスの開発を決めました。これはその前の3年間に供給した床面積の2倍に当たる量。ほかのデベロッパーも開発に力を注いでおり、2020年まではもちろん、それ以降も高水準のオフィス供給が続きそうです。

JR東京駅周辺で計画されている主な大型再開発計画(資料:キャドセンター、日経不動産マーケット情報)
JR東京駅周辺で計画されている主な大型再開発計画(資料:キャドセンター、日経不動産マーケット情報)
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 日経不動産マーケット情報2016年6月号の特集では、こうした東京23区での大規模オフィスビル(延べ床面積1万m2以上)の開発計画を調査しました。2016年以降、市場に供給されるオフィスビルは110棟に上ります。総延べ床面積は972万m2で、虎ノ門ヒルズの約40棟分に相当します。多くは古いビルの再開発であるため、これが純増面積というわけではありませんが、最新設備の大型ビルが増えることでオフィス市況に大きな影響を与えることが予想されます。特集では変貌を遂げる東京駅周辺をCGで表現。さらに1万m2未満の開発計画についても、東京と横浜で調査しています。なお、これらの開発の詳細データを収録したCD-ROMもご用意しています。

 6月号では、TPP(環太平洋経済連携協定)の解説記事も掲載しました。米大統領の座を争うことになるであろうクリントン氏、トランプ氏ともに批判的であることから、早期発効に暗雲が漂い始めたTPPですが、不動産業界にとっても無縁ではありません。将来を見据え、どこにチャンスが生まれるのかを把握しておくことが肝要。ぜひこの記事でご確認ください。

 さて、毎年値上げが続く再生可能エネルギー賦課金。2016年度は標準家庭で月額675円と、この4年間で10倍に膨らんでいます。太陽光発電の普及が背景にありますが、その施設を投資対象とするタカラレーベン・インフラ投資法人が6月2日、東京証券取引所に上場します。同じ「投資法人」ではありますが、REIT(不動産投資信託)とは違う世界が広がっており、6月号でその特徴を解説しました。いちごグループホールディングスやリニューアブル・ジャパンも、太陽光発電ファンドの上場を準備しているといいます。投資家はこれらをどう評価するのか、興味をそそられます。

 売買レポートでは、ヒューリックによるホテル グランパシフィック LE DAIBAの取得や、香港フェニックスが取得した梅田ゲートタワー、住友商事の私募REITが取得したユニバーサル・スタジオ・ジャパンの底地など、25事例を掲載。これらを含む取引事例101件を一覧表にまとめています。

 注目レポート欄には、東京Aグレードオフィスが「賃料上昇の減速」フェーズに入ったとのJLLレポートを掲載しました。東京でのオフィス供給が増えるなか、オフィス市況の先行きには注意が必要です。

三上 一大