14日夜に発生したマグニチュード6.5の地震は、熊本県に最大震度7の揺れをもたらしました。同県内にはREIT(不動産投資信託)8法人がそれぞれ1物件を保有していますが、いまのところ建物に大きな被害は出ていないもよう。熊本に賃貸住宅16棟を所有していたシンガポールREITのSaizen(サイゼン)は、全ポートフォリオをローンスターに売却することが決まっています(関連記事)。いずれのREITも運用成績に大きな影響はないとみられますが、改めて地震国におけるリスク管理の重要性を感じます。(4/18追記:その後の本震の影響もあり、イオンモール熊本で外壁・内装の破損が発生。所有者のイオンリート投資法人が影響を精査中。)

 さて欧州では、投資市場を揺るがしかねない震源として「ブレキジット(Brexit)」に注目が集まっているそうです。英国(Britain)のEU離脱(exit)を表す造語で、シリア難民問題をきっかけに急速に現実味を帯び始めています。日経不動産マーケット情報2016年5月号の特集では、こうした世界の不動産投資をめぐる潮流を解説しました。フランスでこのたび開催された国際不動産コンファレンス、MIPIM(ミピム)の現地取材を通じて、投資家の生の声を拾い集めています。昨年夏、523億円でキラリトギンザを購入した(関連記事)、あのアゼルバイジャン国家石油基金の責任者へのインタビューも必見です。

 5月号では、今年1月~3月の取引を対象とした売買事例分析も掲載しています。昨年後半はやや冷え込みがみられましたが、今年に入り、REITが積極的に物件取得や資産入れ替えを実施。3四半期ぶりに1兆円を超える取引が行われました。ただ利回りは低く、取得環境は厳しい状況が続いています。同じ号で、オフィス成約賃料調査も載せています。併せて、今後の投資環境を考える材料としていただければと思います。

 売買レポートは、103億円で取引されたザ・ペニンシュラ東京や、日本ビルファンド投資法人が216億円で部分取得した上野イーストタワー、大阪・梅田の再開発エリアで地元企業が取得したイースクエア茶屋町など、20事例を収録しました。これらを含む取引事例194件を一覧表にまとめています。

三上 一大