中国の景気減速、原油価格の下落、相次ぐテロ、サウジアラビアとイランの対立激化、北朝鮮の核実験……と、波乱の幕開けとなった2016年。アベノミクスによる景気浮揚から丸3年が経過し、これまで果実を享受してきた不動産業界にとって、今年はどんな年になるでしょう。それを占う材料として、日経不動産マーケット情報2016年2月号で、昨年の不動産投資市場を振り返る特集を組みました。200億円を超える主な大型取引25件を一覧にまとめたほか、2007年以降のセクター別取引占有率の推移、オフィスビルの利回り推移や個別物件ごとの推定利回り、注目を集めるホテルの取引事例一覧など、多彩な分析データを掲載しています。

 日本の公的債務の多さは世界的に知られています。危険水準にあるかどうかは専門家の間でも意見が分かれるところですが、レバレッジに貢献しない借金は少ないに越したことはありません。政府は昨年、年間運営費が1億円以上の公共施設について、PPP・PFI手法の導入を検討するよう国・自治体などに要請しました。その先駆けとなる国立女性教育会館のコンセッション(運営権の民間売却)を、2月号のトピックスで取り上げました。経緯や効果、今後の運用方針に至るまでを解説しています。ただ、紙ではすべてを語り尽くせません。ウェブサイトで6回にわたって全貌を連載する予定ですので、併せてご覧ください。

 売買レポートは、丸紅の私募REIT(不動産投資信託)が取得した大阪の本町クロスビルや、ヒューリックリート投資法人が127億円で購入した虎ノ門のビル、ラサール インベストメント マネージメントによる横浜のビル取得など、18ケースを収録しました。これらを含む取引102件を一覧表にまとめています。

 2月号ではこのほか、四半期に一度実施しているオフィスビル成約賃料調査も掲載しています。特集とともに、足元の市況を把握するデータとしてご活用いただければと思います。

 今年はオリンピックイヤー。ブラジル・リオデジャネイロでの夏季五輪が終われば、いよいよ次は東京です。世界経済の変調、来年4月に迫った消費税増税など不安材料はありますが、4年後に向けて日本が堅調に発展していくことを願ってやみません。

三上 一大