水しぶきをイメージさせる大小のバルーンが浮かぶ会場が、600人を超える参加者の熱気であふれた。ミズベリング・プロジェクト事務局が3月3日に東京・渋谷のヒカリエホールで開催したトークとカンファレンスのイベント「ミズベリングジャパン」だ。
2年間の活動で市民・企業・行政に一体感
ミズベリング・プロジェクトは、水辺空間の新しい活用の可能性を創造するプロジェクト。このプロジェクト自体は何かを建設するわけではなく、アイデアを出したり、制度を使いこなしたりするためのサポート活動を通じ、水辺活用をムーブメントとしてけん引する役割を担う。
本格的なスタートは、2014年3月にミズベリング・プロジェクト事務局が主催した「ミズベリング東京会議」。これを皮切りに各地で、市民、企業、行政関係者が一体となって水辺活用を推進するための「ミズベリング会議」が立ち上がった。その数は、2年間で全国40カ所を超える。こうした盛り上がりが、今回の「ミズベリングジャパン」の盛況につながった。同事務局の山名清隆プロデューサーは「2年前のスタート時には想像もできなかった」と頬を緩める。
「水辺の可能性を切り開く人物に注目」するという今回、事務局によるキーノートに続き、第1部では東急電鉄の東浦亮典・都市創造本部開発事業部事業計画部統括部長、西日本鉄道の花村武志・都市開発事業本部企画開発部課長、ハートビートプランの泉英明代表(水都大阪パートナーズ理事)、リビタの綿引孝仁・地域活性化ホテル準備室企画担当が、それぞれ東京・二子玉川、福岡(水上公園)、大阪、東京・清澄白河を舞台とする「先進水辺動向」をプレゼンテーションした。
さらに第2部では国土交通省の金尾健司水管理・国土保全局長と、これまで一般の企業や市民には触れる機会の少なかった公共空間とその使用希望者のマッチングを進めるためのサイト「公共R不動産」事務局を運営するオープン・エーの馬場正尊代表、東京大学公共政策大学院の辻田昌弘特任教授がフリートークを行った。
市民や民間が水辺を使いたいと思っても、管理する国や行政は禁止事項を並べるばかりで、どうしても対立する構図になりがちだった。ところがミズベリング会議のようにステークホルダーが一堂に会してお互いの気持ちをぶつけ合い、共通点を探す場ができ、「この2~3年で関係性が変わった」と馬場氏は言う。2020年の東京五輪は、ロンドンがそうであったように「水辺などの公共空間を新しく使う実験をするには格好のチャンスだ」(同氏)
拍車をかけるために「PPP(公民連携)エージェントという新しい職能が生まれないかと考えている」と馬場氏は唱える。「責任を問われる立場の行政が踏み出せない部分があるのは無理もない。行政の都合、民間の都合の両方を理解して翻訳し、責任分担などを調整する役割が要る。そうしたエージェント機能を手に入れた瞬間に行政も民間も楽になり、水辺などの活用を進めやすくなるのではないか」(同氏)
一方、金尾局長は、河川敷地を民間企業などが占用する際の許可期間を現状の「3年以内」から公的主体と同等の「10年以内」に延長する方向であると説明した。従来は、企業などが河川敷地にテラスなどを設置して営利事業を行おうとしても占用できる期間の短さが投資回収のリスクとなってしまい、水辺活用の妨げになっていた。そこで、事業展開のハードルを下げるために規制を緩和するというものだ。国交省は3月2日から31日まで、この「河川敷地占用許可準則の一部改正」に関するパブリックコメントを受け付ける。