[取り組み]
リノベーションまちづくり「空き家再生で子育て支援」

 日本創成会議が14年5月に発表した「消滅可能性都市」とは地方に限った問題ではない。東京23区では唯一、豊島区の名前が挙がった。危機感を自覚した区は、対応策の一つとして、首都圏ではいち早く「リノベーションまちづくり」の取り組みに乗り出した。15年12月には「リノベーションまちづくり構想」を制定している。

 リノベーションまちづくりとは、どのようなものか。同構想は以下のように説明している。

・「今あるものを活かし、補助金にはできるだけ頼らず新しい使い方をしてまちを変えることです。民間主導でプロジェクトを興し、行政がこれを支援する形で行う“民間主導の公民連携”が基本的なスキームとなっています」
・「遊休化した不動産という空間資源と潜在的な地域資源を活用して、民間自立型プロジェクトを興し、地域を活性化します。そして、都市・地域経営課題を複合的に解決します」
・「既存の遊休不動産をリノベーションすることは、解体撤去・新築型に比べて、スピードが速く、収益性が高いことが特長です」

都内初のリノベーションスクール開催

 豊島区の課題は、転入してきても「長く住み続けられるまち」ではない、ということだった。特に、子育て世代が流出せざるを得ない様々な要因があった。

 そこで、同構想の中では「民間と公共の空き家・空き地を活用して都心に住んで、子育てして、働きながら暮らし続けられるまちをリノベーションまちづくりで実現する」という目標を設定。コンセプトは明確に、「Happy Growth Town ママとパパになりたくなるまち、なれるまち」とうたっている。

豊島区リノベーションまちづくり構想のコンセプトビジュアル(資料:豊島区)
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豊島区リノベーションまちづくり構想のコンセプトビジュアル(資料:豊島区)

 具体的にまちを変えるためには同構想の下、リノベーションスクールなどを実施する。豊島区では構想案の検討と並行し、15年3月と9月に既にスクールを実施している。

 リノベーションスクールは、短期集中講義の形を取り、不動産オーナーの協力を得て実際に区内にある遊休不動産を題材とし、受講生チームが事業を提案するというものだ。提案で終わらせずに事業化につなげるのが目標で、受講生が自ら「まち会社」を立ち上げるなどして運営に関わる場合もある。

2015年9月の第2回 リノベーションスクール@豊島区の公開プレゼンテーションの様子。解体前の旧議場を会場に用いた(写真:日経アーキテクチュア)
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2015年9月の第2回 リノベーションスクール@豊島区の公開プレゼンテーションの様子。解体前の旧議場を会場に用いた(写真:日経アーキテクチュア)

 リノベーションスクールの活動が全国に広がる中で、都内では豊島区が初の開催地。どのような成果を生み出すのか注目されている。15年3月には、スクールで提案された事業計画から発し、旅館およびミシンによるものづくりをテーマとするカフェを複合する「シーナと一平」が椎名町に開業する予定。リノベーションまちづくり構想の下で生まれた第1号という位置付けとなる。


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