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東京大改造

ポスト2020──東京の成熟とは?

対談:保井美樹氏(法政大学現代福祉学部教授)+木下斉氏(エリア・イノベーション・アライアンス代表理事)

2016/03/03

大改造の進む東京は、成熟化に向けて歩んでいるのか?いま欠けている視点は何か? 1月に発売した「東京大改造マップ2016-2020」の中で、国内外の都市政策や街づくりの事情に詳しい保井美樹氏と木下斉氏に語り合ってもらった。

保井 東京は、地方と一緒になって日本を成長させていく。そのために、どんな都市整備が必要かというのが今日のお話の主題だと思います。

 木下さんとは、ヨーロッパの都市の視察をご一緒しましたね。いま世界中で都市人口が増え続けている。「田園都市」をうたってきた英国だって、都市人口が8割を超えている状況です。

木下 今後、ますます世界中の人口は都市部に集中していきますよね。

保井 はい。そうした世界の状況の中で抜きん出るために、どんな都市像を東京は描くのか。

 東京都の都市計画審議会は15年9月に、都市づくり調査特別委員会を設けました。2040年代を視野に収め、東京の都市像と、それを実現するための道筋を検討しています。

 当初、ここでの議論に、「世界最先端のビジネスセンター」を生み出し続ける東京という話があって、私は個人的に違和感を持っていました[図1]。世界の大都市を見た時にビジネスだけのセンターって、もうないじゃないですか。東京でもデベロッパーは、そんな言葉は使いません。今や、ビジネスだけでなく、居住、商業、文化などが同一エリアで展開され、そのエリアの目指すライフスタイルが総合的に提示されるのが普通です。

〔図1〕東京都による「目指す都市像(イメージ)」
(資料:東京都「都市づくり調査特別委員会」(2015年10月))

木下 どんなメガロシティだと言っても、総花的にあらゆるビジネスが集積するような巨大戦艦型モデルを構想しがちなのが東京の非常に悪いところです。規模で勝てばいいという話になる。

 しかし、産業分野は多種多様あり、しかも専門性が高まり、立地決定の要素も多様化しています。企業一つ取っても本社、R&D、生産、営業など多種多様。それなのに「何でも世界の中心」みたいな話になってぼやけたままになっているのは、東京のポジション低下の理由の一つですよね。特定産業が強烈に「東京でなくてはならない」と言えるような状況になるためには、ビジネスでも特化が必要で、かつビジネスだけでなく、良い社員を獲得するための都市文化や環境も必要になります。

期待感を持たせる都市になれるか

保井 その中で渋谷は、カワイイ文化とか若者のポップカルチャーをベースにしながら、ファッションや情報産業が進展しており、さらに、LGBT(※)など多様性を認める社会の仕組みづくりを進めています。駅周辺の都市改造が、そうした新しい経済・社会価値の提示とともに進んでいるのは、街のポジショニングとして優れていると思います。

※性的マイノリティを限定的に指すもので、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーを総称する言葉

保井美樹(やすい・みき)氏/法政大学現代福祉学部教授
1969年生まれ。91年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、保険会社勤務を経て、97年米ニューヨーク大学大学院公共政策大学院都市計画専攻修士課程修了。2013年より法政大学現代福祉学部福祉コミュニティ学科教授。著書に「新版エリアマネジメント」(共著)など(写真:西田香織)

木下 渋谷の交差点などは映画にも使われる、ある一つのアイコンとなる景観となっていますよね。

保井 世界を相手に外需型の都市として稼ぎ、分け前を地方に分配するのがいい。木下さんは常々「東京はまだ内需型だけで行くのか?」と疑問を呈していますね。

木下 2040年には日本全体で2000万人ぐらい人口が減るという時、東京は他の地域から人を食いつつ減少率は低いものの、東京が相手にしている首都圏さらには日本全土の内需市場は減少する。日本の中心でやってきたからこそ、東京は変化に対して危機感を持たなくてはならないわけです。

 東京は規模や独自の文化性などから「世界の東京」と言っているけれど、経済の中身を見れば、超内需型都市です。ここから外需や対東京投資を真剣に検討してもらえるような脱皮が求められていて、それが縮小社会時代の東京の課題だと思いますね。

保井 社会学者のサスキア・サッセンが90年代に「グローバル・シティ」(原書は1991年、邦訳は2008年)という本を出した頃は金融と不動産が都市の主たるアクターで、それが巨大なビル開発と直結しているという論調でした。現在、様相は変わって、もっと多様な価値観の下で、新たな産業と投資のメカニズムが連動し始めている。

 最近は色々な都市ランキングがありますけれど、大切なのは将来に対する期待感を持たせる都市かどうかです。ニューヨークを訪れると「ここだったら、また産業革命が起こるんじゃないか」という可能性を感じさせる。それは、新たな産業の種となる多様な人材がいて、彼らの新たな取り組みに柔軟な規制緩和がなされているからです。公共空間一つ取っても、使い方に変化があれば、そこは新しい動きを進める都市だと実感できます。

構成・文:山本恵久日経アーキテクチュア

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