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東京大改造

小田急複々線になる箱形トンネルを歩く

2017/12/28

(写真:大上祐史)

 小田急電鉄は、小田急小田原線の下北沢地区(東北沢~世田谷代田)で複々線化事業を進めている。先行して共用した複線のシールドトンネルの上に、さらに開削工法でトンネルを造って複々線にする。2018年(平成30年)3月に線路を切り替えることが決まった。

 17年12月21日、報道機関に向けて「小田急電鉄 複々線開通前最後の工事現場説明会」が行われた。

 小田急電鉄は、複々線化事業を東京都の連続立体交差事業と一体的に進めている。複々線化事業は線路を複線(2本)から複々線(4本)にするもので、小田急電鉄が事業主体。目的は混雑の緩和や所要時間の短縮、列車の増発など輸送サービスの抜本的な改善だ。

 小田急の複々線化事業は、東北沢~和泉多摩川の延長約10.4kmで実施し、東北沢~世田谷代田の延長約1.6kmを残して完成している。この下北沢地区が最後の区間となる。

(資料:小田急電鉄)

 下北沢地区は、地下に上下2層のトンネルを掘り、上部のトンネルは2線(上下線)の緩行線、下部のトンネルには2線(上下線)の急行線が走るようになる。現在はまだ、下部のトンネルだけで緩行線も急行線も運行している。

下部は円形、上部は箱形のトンネル

 下部はシールド工法で造られた円形トンネル、それ以外は開削工法で造られた箱形トンネルだ。下北沢駅付近の工事は、まず下部のシールドトンネルを先に掘削し、その上部に箱形トンネルを施工した。その後、箱形トンネルの下を掘削して、2本のシールドトンネルの間を切り広げてホームを築いた。
(関連記事:小田急複々線化、線路直下で初のシールド切り広げ

 04年9月、工事に着手。13年3月22日の終電後に地上の線路を地下のトンネルへ移した。ただし、線路は複線のままだ。その後、地上の線路は除却。続けて上部のトンネル工事を進めた。
(関連記事:小田急3駅も地下化、未明の切り替えに密着

 18年3月2日の終電後に切り替え作業が完了することで、翌3月3日から複々線での運行になる。東北沢、下北沢、世田谷代田の3駅では同日、新たなホームの使用を開始する。

(資料:小田急電鉄)

 複々線化事業と併せて進められた連続立体交差事業は、東京都が事業主体となって施行した。道路整備の一環として、市街地において道路と交差している鉄道を、一定区間連続して高架化または地下化することで立体化。開かずの踏切をはじめとする多数の踏切の除却や新設交差道路との立体交差を一挙に実現する都市計画事業だ。線路を地下へ移動させることで下北沢地区では9箇所の踏切が廃止になった。

 工事現場説明会として最初に、下北沢駅東口(新宿側)の旧東北沢6号踏切を見る。旧東北沢6号踏切は1時間のうち最長で57分間も閉まっていたこともあり、開かずの踏切と呼ばれていた。将来は駅前広場が整備される。

(写真:大上祐史)

改良工事が進む下北沢駅

 次に、駅舎を見るため下北沢駅南西口(小田原側)へ移動した。新しい駅舎の工事も進行中で、こちらは複々線化から1年後の2019年3月に完成する予定だ。東北沢、下北沢、世田谷代田の3駅は、安全・使いやすい・人にやさしい・環境にやさしいを共通のコンセプトとして駅づくりが進められている。

(写真:大上祐史)

 複々線化が完了すると、地下1階は緩行線、地下2階は急行線が停まる。どちらの階も島式ホーム1面2線だ。現在は地下2階に緩行線と急行線が停まり、地下1階はエスカレーターの経由のみ使用している。

(資料:小田急電鉄)

 駅舎の地上2階から、1階を見下ろす。駅と街のアクセス向上を目指して開放感のあるデザインになっていて、天井には太陽光パネルが設置されている。エスカレーターの手すりの色は地下1階が青色、地下2階は赤色と、視覚で行き先が判別しやすいことも特徴の1つだ。

(写真:大上祐史)

 南西口から見る小田原方面は、除却された線路の空間がまっすぐ伸びている。

(写真:大上祐史)

運行を待つ緩行線の箱形トンネル

 地下1階へ移動した。ホームには落下防止の固定柵が設置されている。

(写真:大上祐史)

 続けて、18年3月3日より使用される緩行線トンネル内を歩いて世田谷代田駅へ向かう。

(写真:大上祐史)

 使用開始に必要な線路設備工事は完了し、仕上がりの確認や試験および調整が進んでいる。

(写真:大上祐史)

 よく見かける線路は横方向の枕木でレールを支えているが、ここでは縦方向に梁を設けてレールを支えるラダー軌道が採用されていた。弾性材による振動の低減効果に加え、電車から受ける荷重を線で分散できるため、線路の傷みが少なく保守作業を低減できる。

(写真:大上祐史)

 世田谷代田駅のホームが見えてきた。天井には換気用のダクトを確認できる。

(写真:大上祐史)

 勾配標と呼ばれる鉄道標識が設置されている。線路の縦断勾配が1000分率の‰(パーミル)で示され、ここでは水平に1000m進むと10m降りる勾配であることがわかる。

(写真:大上祐史)

 小田原方面の線路は地上へ向かう。

(写真:大上祐史)

世田谷代田駅に到着、仮設ホームは閉鎖に

 現在、使用されている世田谷代田駅地下2階の仮設ホームだ。複々線となると、急行が停まらない世田谷代田駅では、この仮設ホームは閉鎖され、地下1階の緩行線のホームに移る。

(写真:大上祐史)

 最後に、新しい世田谷代田駅を見る。地上1階には複々線化事業について知ることができる小田急環境ルームが常設されている。

 世田谷代田駅は、LED照明や光ダクト、人感知エスカレーター、回生電力エレベーター、地中熱ヒートポンプシステム、自然換気、太陽光発電システムといった、自然の力を最大限に活用する仕組みが採用されている。

 回生電力エレベーターは、エレベーター運転時に発生する回生電力をバッテリーに蓄電し、蓄電した回生電力と通常電力を併用する。

 地中熱ヒートポンプシステムは、冷暖房に使用する冷媒の温度を一年中15℃と一定している地中の温度を使うことで、消費電力を少なくしCO2排出量削減につなげるものだ。

 壁面と天井の隙間に空間がある。室内外の温度差によって生じる室内空気の比重差と風力による自然換気を採り入れている。

 工事エリアとなっている新宿側から駅舎を見た。屋上から採光した太陽の光を、鏡の反射で地下階まで運ぶ光ダクトを確認できる。

(写真:大上祐史)

 「小田急電鉄 複々線開通前最後の工事現場説明会」はここまでとなる。最後の質疑応答で小田急電鉄複々線建設部の宮原賢一課長は「事業を安全確実に焦ることなく完了させる」と宣言した。

(写真:大上祐史)

 18年3月3日の始発電車から、代々木上原駅─梅ヶ丘駅間において複々線での運転を開始する。また、3月17日より土曜・休日用、3月19日より平日用の新しいダイヤでの運行となり、以下のようなメリットが生まれる。

  • 列車大増発で混雑緩和
  • 所要時間短縮
  • 乗り換えなしで都心へ移動可能
  • 座って快適通勤

工事の概要は以下の通り。

  • 工事名:小田急小田原線連続立体交差工事・複々線化工事
  • 工事費:約1662億円
  • 発注者:小田急電鉄
  • 受注者:
     第3工区/下北沢駅─世田谷代田駅間:大成建設・前田建設工業・西松建設・銭高組・三井住友建設JV
     第4工区/世田谷代田駅:清水建設・鴻池組・大豊建設JV
筆者の大上祐史さんは、インフラ建設現場の見学会などに積極的に参加してリポートするウェブサイト「ラジエイト」を運営しています。

大上 祐史=ラジエイト代表 [日経コンストラクション

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