インフラ建設現場の見学会などに積極的に参加してリポートするウェブサイト「ラジエイト」を運営する大上祐史さん。読めば現場に行った気になる臨場感たっぷりのリポートをお楽しみください。

(写真:大上祐史)
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 霞ケ浦導水は、那珂川の下流部と桜川、霞ケ浦、利根川の下流部をつなぐ巨大な地下水路だ。月1回程度、休日に限定された特別見学会が行われていて、2017年6月24日(土)にも開催される。涼しい地下水路は、夏の見学会に最適。筆者が1月に参加した見学会の模様をリポートする。

 那珂川下流域と利根川下流域の流水の正常な機能維持、新たな水の確保と霞ケ浦、桜川・千波湖の水質浄化のため、トンネルを整備して水を相互にやり取りする事業が進められている。

 見学会の集合場所は、茨城県水戸市にある霞ケ浦導水の那珂機場(なかきじょう)。機場とは、水を送り出すためのポンプなどの設備がある施設だ。建物の大きさに圧倒される。

(写真:大上祐史)
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 会議室で、特別見学会の説明を受けた。
 利水や水質浄化において重要な事業なので、茨城、千葉、東京、埼玉の1都3県が事業に参画している。

(写真:大上祐史)
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 霞ケ浦の周辺には、那珂川と桜川、利根川が流れている。霞ケ浦導水工事事務所の説明によれば、これらをトンネルでつなぎ那珂川や利根川から霞ケ浦を挟んで相互に水を導くことで、以下のような効果がある。

  • 霞ケ浦や桜川の水をきれいにする
  • 那珂川や利根川の水不足を減らす
  • 新たに水道用水や工業用水を確保する

 まさに一石三鳥だ。

(資料:霞ケ浦導水工事事務所)
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 霞ケ浦導水の延長は約45.6km、形式は地下水路圧力管方式、河川名は「利根川と那珂川を霞ケ浦を介して結ぶ流況調整河川(霞ケ浦導水路)」だ。

(資料:霞ヶ浦導水工事事務所)
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 霞ケ浦導水は、那珂導水路と利根導水路で構成されている。
 那珂導水路は那珂川と桜川、霞ケ浦をつなぐ。トンネルは延長約43.0kmで、地下約20~50mに設けられる。
 利根導水路は霞ケ浦と利根川をつないでいる。トンネルは延長約2.5km。

 1984年(昭和59年)、建設が着手された。2016年度(平成28年度)時点では、那珂導水路の一部となる水戸トンネルによって、那珂川と桜川がつながっている。

(資料:霞ケ浦導水工事事務所)
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 全体事業費は約1900億円、2016年度(平成28年度)までに約1522億円が使われた。

 那珂機場では、那珂川の水をポンプを使って、那珂導水路を通して霞ケ浦や桜川へ流す。また、霞ケ浦の水を那珂導水路を通して那珂樋管で那珂川へも流す。

(資料:霞ケ浦導水工事事務所)
(資料:霞ケ浦導水工事事務所)
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 霞ケ浦導水工事事務所によれば、那珂川の下流部では、水不足になると塩分の高い水が川を上り、水道や事業用水などの取水ができなくなってしまう。霞ケ浦導水を使い、利根川や霞ケ浦から那珂川へ水を送ることによって、安定した取水ができるようになる。
 逆に那珂川に水が多いときは、霞ケ浦や利根川へ水を送り、霞ケ浦や桜川などの水質を浄化し、利根川の濁水被害を軽減することができる。