国立西洋美術館の世界遺産登録決定に沸く東京・上野の街。1883年にターミナルの上野駅が開業してから発展を続け、現在は観光地としての性格も強めつつある。近代的な建築物も増えて変わりつつある街並みを、見渡してみよう。

JR上野駅の正面玄関口。北へ向かう列車のターミナル駅として、バブル経済期まで不動の地位を築いてきた。その後、新幹線や上野東京ラインが東京駅へ延伸され、現在は中間駅と化しているものの、多くの人でにぎわう。2代目となる現駅舎は1932年に竣工、設計は当時の鉄道省の技師・酒見佐市(写真:日経BPインフラ総合研究所)
JR上野駅の正面玄関口。北へ向かう列車のターミナル駅として、バブル経済期まで不動の地位を築いてきた。その後、新幹線や上野東京ラインが東京駅へ延伸され、現在は中間駅と化しているものの、多くの人でにぎわう。2代目となる現駅舎は1932年に竣工、設計は当時の鉄道省の技師・酒見佐市(写真:日経BPインフラ総合研究所)
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上野公園に立つ西郷隆盛(1828-1877年)の像。上野の象徴的な存在(写真:日経BPインフラ総合研究所)
上野公園に立つ西郷隆盛(1828-1877年)の像。上野の象徴的な存在(写真:日経BPインフラ総合研究所)
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 上野の特徴は、山手と下町の両方が共存している点だ。山手エリアは台地の上にある上野恩賜公園(上野公園)が中心で、国立西洋美術館をはじめ東京文化会館や恩賜上野動物園(上野動物園)など数多くの文化施設が集中。台東区が「上野の山文化ゾーン」と呼ぶアートの集積地だ。北側には、江戸時代の徳川将軍家の菩提寺である寛永寺や東京芸術大学のほか、閑静な住宅地が広がる。

 一方の下町エリアは、上野公園の南側に広がる飲食店や物販店が集中する地域だ。アメヤ横丁(アメ横)を中心に多くの商店街が縦横に広がる。どちらのエリアも、平日より休日の方がにぎわう。

文化施設はそれぞれ名建築

 まず山手エリアから。上野公園の案内図を見ると、美術館・博物館が6施設、劇場が3施設、記してある。多くは公営の施設でよく知られる存在だ。これほど多くの文化施設が集中しているエリアは都内でも珍しい。

 各施設それぞれが名建築になっているのも注目点だ。世界遺産への登録が決まった国立西洋美術館の本館は、建築家のル・コルビュジエ(1887-1965年)が設計して、1959年に開館した。そのコルビュジエの弟子である前川國男(1905-1986年)が設計した建築物に、東京文化会館(1961年完成、コンサートホール)、東京都美術館(1975年完成)などがある。

 古い建築物も健在だ。1931年に完成した国立科学博物館の日本館、1937年に完成した東京国立博物館の本館などが鎮座する。上野公園は明治時代から一貫して、文化的に利用されてきた。
関連記事:「心の駅」上野。パンダ、アートを見て、アメ横に(2012/11/21)

 そうした精神を、ごく近年の建築も受け継ぐ。大噴水の近くにあるスターバックス上野恩賜公園店と上野の森PARK SIDE CAFEは、どちらも緩い傾斜の切妻屋根を持つ平屋建て。周囲の森などの景観になじんでいる。

2016年7月、世界遺産登録が決まった国立西洋美術館の本館。1959年に開館した。主にフランスで活躍した建築家、ル・コルビュジエ(1887-1965年)が設計した (写真:日経BPインフラ総合研究所)
2016年7月、世界遺産登録が決まった国立西洋美術館の本館。1959年に開館した。主にフランスで活躍した建築家、ル・コルビュジエ(1887-1965年)が設計した (写真:日経BPインフラ総合研究所)
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東京文化会館。1961年に完成したコンサートホールだ。西洋美術館の向かいに立つ。ル・コルビュジエの弟子である前川國男(1905-1986年)が設計した(写真:日経BPインフラ総合研究所)
東京文化会館。1961年に完成したコンサートホールだ。西洋美術館の向かいに立つ。ル・コルビュジエの弟子である前川國男(1905-1986年)が設計した(写真:日経BPインフラ総合研究所)
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東京都美術館。現在の建物は1975年に完成した。設計は前川國男(写真:日経BPインフラ総合研究所)
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国立科学博物館の日本館。文部省の文部技師である糟谷謙三が設計して1931年に完成した(写真:日経BPインフラ総合研究所)
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東京国立博物館の本館。渡辺仁(1887-1973年)が設計して1937年に完成した(写真:日経BPインフラ総合研究所)
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スターバックス上野恩賜公園店。和風の外観で周囲の風景になじんでいる(写真:日経BPインフラ総合研究所)
スターバックス上野恩賜公園店。和風の外観で周囲の風景になじんでいる(写真:日経BPインフラ総合研究所)
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京成電鉄の地下駅で2004年に正式廃止された博物館動物園駅跡。4両編成と短い電車しか停まれないことが仇となって利用客が減り、老朽化も進んだので1997年から休止していた(写真:日経BPインフラ総合研究所)
京成電鉄の地下駅で2004年に正式廃止された博物館動物園駅跡。4両編成と短い電車しか停まれないことが仇となって利用客が減り、老朽化も進んだので1997年から休止していた(写真:日経BPインフラ総合研究所)
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国立国会図書館国際子ども図書館。旧帝国図書館として、1906年に第1期工事が、1929年に第2期工事が完成した。久留正道(1855-1914年)が設計した(写真:日経BPインフラ総合研究所)
国立国会図書館国際子ども図書館。旧帝国図書館として、1906年に第1期工事が、1929年に第2期工事が完成した。久留正道(1855-1914年)が設計した(写真:日経BPインフラ総合研究所)
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旧寛永寺五重塔。上野公園はもともと寛永寺の土地であり、周辺には旧跡も多く存在する(写真:日経BPインフラ総合研究所)
旧寛永寺五重塔。上野公園はもともと寛永寺の土地であり、周辺には旧跡も多く存在する(写真:日経BPインフラ総合研究所)
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上野公園に掲示してある案内図。美術館・博物館として、東京国立博物館、国立科学博物館、国立西洋美術館、東京芸術大学美術館、東京都美術館、上野の森美術館の6施設、劇場として、東京芸術大学奏楽堂、東京文化会館、旧東京音楽学校奏楽堂の3施設を記している。ほかに寺社なども多数(写真:日経BPインフラ総合研究所)
上野公園に掲示してある案内図。美術館・博物館として、東京国立博物館、国立科学博物館、国立西洋美術館、東京芸術大学美術館、東京都美術館、上野の森美術館の6施設、劇場として、東京芸術大学奏楽堂、東京文化会館、旧東京音楽学校奏楽堂の3施設を記している。ほかに寺社なども多数(写真:日経BPインフラ総合研究所)
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7月10日に全国氷彫刻展夏季大会が開かれていた。アートの街ならではのイベント(写真:日経BPインフラ総合研究所)
7月10日に全国氷彫刻展夏季大会が開かれていた。アートの街ならではのイベント(写真:日経BPインフラ総合研究所)
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