東京大改造

中野がイメチェン、駅前も新街区へ移動

2016/06/21

日経アーキテクチュア

サブカルチャーの街・中野が大きな転換期を迎えている。中野区が中野サンプラザと区役所を一体再整備する基本方針をこの春に公表。中野駅の西側に新しい北口と広場を設けて、サンプラザ後継施設と直結する。超高層マンションの建設計画も相次いでおり、街全体のイメージががらりと変わりそうだ。

中野駅の現・北口駅前広場。中野通りの東側(写真では手前側)に位置する。北口改札から中野通り西側の区役所や四季の都市方面へは、ペデストリアンデッキで接続(写真:赤坂 麻実)
北口広場から北へ伸びる長さ約224mの「中野サンモール商店街」(写真:赤坂 麻実)
マニアックな店がひしめく「中野ブロードウェイ」入口。中野サンモールの突き当たりにある(写真:赤坂 麻実)

駅前が中野通りの西へ「移動」

 中野といえば中野駅北口に、コンサートホールの中野サンプラザや、ユニークなテナントが集まるショッピングモールの中野ブロードウェイなど、著名な施設がある。芸人が多く住む街としても知られ、サブカルチャーのイメージが強い。そんな駅北口が、大改造のただ中にある。

 現状の中野駅には、JR中央快速線、中央・総武緩行線、東京メトロ東西線が乗り入れる。ホームの直下を抜ける中野通り東側に、改札口やコンコースがある。対面する中野通り西側にJR東日本が橋上の駅ビルを新設し、中野区もそれに合わせて線路をまたぐ南北自由通路と駅前広場を整備する。これによって線路北側の中野通り西側へ出る「新北口」の改札と広場が新設される。新北口広場は約1万5600m2。現・北口広場の2600m2に比べると6倍の広さだ。

 新北口の正面に、中野サンプラザと区役所の一体開発の計画地が位置する。すぐ西側では、2012年に「中野四季の都市」(なかのしきのまち)が街びらきしており、新北口周辺には駅前らしいにぎわいが形成されそうだ。これまで、中野のにぎわいの中心は、同じ駅北口でも中野ブロードウェイなどがありサブカル色の強い中野通り東側だったが、通りを越えて再開発中の西側へ移ってくることになる。

中野区は中野駅を中心とする約110haを対象に、街づくりのグランドデザインを策定している。中野駅から見て西北で、中野区役所や中野サンプラザがある中野4丁目エリアは「先端的な都市機能と豊かな緑」が街づくりのテーマ(資料:中野区)
中野四季の都市、中野区役所、中野サンプラザなどの位置図。中野駅の新改札ができれば、アクセスも便利に(資料:東京建物)
中野駅の新北口予定地。整地などの工事が始まっている(写真:日経アーキテクチュア)
中野駅の新北口予定地の周囲をぐるりと見わたす(動画:日経アーキテクチュア)

1万人収容のサンプラザ後継施設

 中野区は中野サンプラザと区役所のほか、NTTドコモ中野ビルや中野税務署が立地する約4.85haの区域を「区役所・サンプラザ地区」として再整備する。ここに1万人収容のイベントホールや集客交流施設、駅前広場、多機能な複合ビルなどを整備する方針。2025年の竣工を目指し、区が都市再生機構や公募で選ぶ民間事業者と協力して進めていく。協力事業者については現在、応募を受け付けており、7月下旬に選定結果を発表する。

 中野サンプラザの機能を発展させる新ホールは、中野のシンボルとしての役割も受け継ぎ、最大収容人数1万人の規模を目指す。現在のサンプラザホールの約2200人収容に比べて、4倍以上の規模に拡大する。コンサートのほか、スポーツイベントや展示会などにも使えるよう、アリーナ(平土間)部分を組み込む。コンベンションやカンファレンスができる付帯施設も整備する予定だ。

中野サンプラザ(写真右)と現・中野区役所(左)。サンプラザは2022年に解体予定(写真:赤坂 麻実)
区役所・サンプラザ地区の位置図。NTTドコモ中野ビル、中野税務署なども含めて再整備する(資料:中野区)

 新たに整備する駅前広場は、線路上空に新設する西側南北通路の北側の受け口としても機能させる。バス乗降場やタクシー乗降場、一般車乗降場を配置し、地下には公共駐車場も設ける。広場や駐車場と駅ビルは、地上と地下で接続する。

 複合ビルには、来街のきっかけになるような商業空間や、大規模なワンフロア面積を持つオフィス空間を設ける。また、サンプラザ後継施設にMICE(ビジネスイベント)を誘致できるよう、この複合ビルに宿泊施設も整備する。さらに、職住近接や長期滞在を可能にする高機能な居住空間も予定している。

17haの新しい街

 区役所・サンプラザ地区の西側に隣接する街区では、巨大なオフィスビルや防災公園、大学のキャンパスなどを集積する中野四季の都市が、2012年に街びらきをした。2001年に転出した警察大学校などの跡地約16.8haを産官学連携で再開発したプロジェクトだ。なかでも東京建物が、業務棟2棟と住宅棟から成る複合開発「中野セントラルパーク」を推進。2012年に、約1.5haの都市計画公園を囲むように、3棟が竣工した。敷地南部に建つ中野セントラルパークサウスには、キリングループの各本社が入居して話題になった。

「中野四季の都市」。約1.5haの公園をオフィスビルが囲んでいる(写真:赤坂 麻実)
キリングループの各本社が入る中野セントラルパークサウス。セントラルパークは2014年度にグッドデザイン賞(都市づくり、地域づくり、コミュニティづくりの3部門)を受賞した(写真:赤坂 麻実)
中野四季の都市の敷地には、公園と公共空地を合わせて約3haもの緑地がある。公園では家族連れや学生のグループ、休憩中の会社員などがくつろぐ(写真:赤坂 麻実)
南側から見た中野セントラルパークサウス。左肩に「KIRIN」のロゴが見える(写真:赤坂 麻実)

 これまで中野の大規模オフィスビルは、北口の丸井本社ビルやNTTドコモ中野ビルなど、数棟に限られていただけに、中野セントラルパークの完成は、新しくオフィス街ができたというほどのインパクトがあった。

 「ワンフロア約850坪という広さ、目の前が公園という環境の良さがポイント。キリンという大企業が本社を構えたこともイメージアップにつながった。東日本大震災の翌年の開業とあって高台の立地も強みとなり、2棟とも良いペースで満室になった。賃料は従来の周辺地域の相場に比べて1.5倍ほどの水準であり、成功といえる」(三幸エステートの今関豊和チーフアナリスト)。

 三幸エステートの調べによれば、2015年末時点のオフィスの築年数別ストックは、中野区では新耐震基準(1984年以降の竣工として集計)が全体の61%を占め、2000年以降の竣工も全体の27%である。東京23区は新耐震が48%、2000年以降が25%であり、比較すれば中野の“新しさ”は顕著だ。

オフィスの築年数別シェアを面積ベースでみる。中野区はこの10年で「2000年以降」のシェアが26ポイント高まり、東京23区をわずかながら超えた。データは2015年末時点のもの。集計上1983年以前の竣工を旧耐震とみなした(資料:三幸エステートの資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
オフィス賃料を坪単価で比較(単位は円)。中野区の大規模オフィスは西新宿エリアの賃料をわずかながら上回る。データは2016年4月末時点のもの(資料:三幸エステートの資料を基に日経アーキテクチュアが作成)

 中野は都心からやや外れた周縁部として唯一ともいえる新興オフィスエリアとして気を吐いている。「都心回帰の流れが加速する昨今、周辺地域ではなかなか冒険しづらい。都心でオフィスが不足した時期に、多摩方面やウオーターフロント一帯などへ出て行った企業も今後、都心に戻ることが予想される。一方、中野に限れば、新宿で当面はオフィス不足の状態が続くため、受け皿になれる」(今関氏)

吉祥寺の乗車人員を抜いた

 中野セントラルパークの西側には、北から順に早稲田大学、帝京平成大学、明治大学の各キャンパスが並ぶ。合同の文化祭を開催したり、地域のイベントに学生が参加したりと、学生同士、学生と地元の交流も生まれている。

 北側も開発が進む。現在は中野体育館がある区域に中野区役所を移転整備することが決まった。5階建て(一部6階)、延べ面積で約3万500m2の規模になる予定で、2020年度の竣工を目指している。

 中野四季の都市の街びらきにより、中野駅周辺の昼間人口は約2万人増加した。JR東日本の1日当たり乗降人員数でも、中野駅は2014年に吉祥寺駅を抜いて14万人を超えた。

南側から線路越しに見る明治大学(手前)、帝京平成大学のキャンパス(写真:赤坂 麻実)
中野四季の都市の敷地北側では、2012年に区立中学校2校を統合して中野中学校を設立した(写真:赤坂 麻実)
JR中央線の中野駅、吉祥寺駅、立川駅の1日当たり乗車人員の推移。中野は2012年から2013年にかけ急増して、2014年には吉祥寺を超えた。縦軸が乗車人員数、横軸が西暦(資料:JR東日本の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)

 さらに、中野四季の都市の南側に隣接する囲町地区約3.5haでも再開発の計画がある。このうち東側の約2.0haでは、市街地再開発事業を進める。現在は戸建て住宅や小規模な集合住宅が多いエリアになっているが、高層の住宅棟を2棟と業務棟を建設し、土地の高度利用化を図る。低層部には商業施設も整備する。住宅の供給目標は約600戸。建物を道路境界から後退させ、駅や四季の都市と結ぶ歩行者ネットワークも整備する。2018年度以降に着工し、2022年度頃の竣工を目指している。

中野四季の都市の南側に位置する住宅街の囲町地区では、土地の高度利用化を目指し、街づくりの計画が持ち上がっている。地区東側では市街地再開発準備組合の設立を予定しており、西側でも街づくり活動を進めていく(写真:赤坂 麻実)
囲町地区の位置図。中野四季の都市とJR線に挟まれている(資料:中野区)
囲町地区で検討している建築計画。業務棟(右)と住宅棟2棟を建てる(資料:中野区)
囲町地区の中央部に広場を整備する(資料:中野区)

中央線の南側にも広場新設

 線路の南側も大きく変わる。西側南北通路の南側の受け口の位置付けで、中野駅西口として約1200m2の広場を設置する予定だ。付近は現在、狭い道路や小規模のオフィスビルが多いが、駅直近から線路に沿って、街区の再編や道路の整備も進める。線路沿いの桃丘小学校跡地には、自転車駐車場や商業施設を備えた拠点施設をつくって、にぎわいを創出する。

駅の南西に新設する西口とその周辺地区の将来像。駅前らしい都市機能を持たせ、にぎわいを生む(資料:中野区)
新設する西口駅前広場のイメージ。2階の高さにあるのは、新設する橋上の駅ビルと南北自由通路(資料:中野区)
駅西口で拠点施設の建設が予定されている桃丘小跡地周辺(写真:赤坂 麻実)

 中野通りの東側に位置する南口でも動きがある。更新時期を迎えた公社中野駅前住宅の建つ区域で、市街地再開発事業を予定している。すでに都市計画決定しており、今年8月には再開発組合の設立を予定している。総事業費約561億円を投じて、超高層の業務棟と住宅棟を整備する。住宅は約440戸を予定している。工期は2019年4月~2022年1月の予定だ。公社住宅については、再開発区域の南側に敷地を確保し、高層ビルに建て替えて集積する。

中野二丁目地区第一種市街地再開発事業の完成イメージ(資料:中野二丁目再開発準備組合)
南口の開発エリア。実線内が土地区画整理事業区域、点線内が市街地再開発事業区域(資料:中野区)
再開発建物などの整備イメージ(資料:中野区)
南口駅前広場の拡張イメージ(資料:中野区)
建て替えが予定される公社中野駅前住宅(写真:赤坂 麻実)
公社住宅付近の間道。再開発区域は北側が高台になっており、南北の高低差は最大10m(写真:赤坂 麻実)
現在の駅南口広場(写真:赤坂 麻実)

 再開発では、高低差のある地形を生かして2階レベルに人工地盤を設置し、その上下に商業施設、駅に近い北側に業務棟、南側に住宅棟を配置する。この再開発に合わせて、区は南口駅前広場を3300m2から4000m2に拡張するなど、約2.4haの土地区画整理事業を進める。再開発区域の人工地盤は、地区の東側の地盤とほぼ同一レベルとし、これにより、施設内の昇降設備を利用して駅前広場から地区東側方面へ、ユニバーサルデザインに配慮した歩行者動線を確保する。

 中野区が2006年に実施した調査に基づく推計では、駅前広場の合計利用者は1日当たり約23万人。これが再開発後には約48万人に増えると見込んでいる。開発前の2倍超の人出で、街は格段に活性化しそうだ。

赤坂 麻実=フリーライター日経アーキテクチュア