既存建物を3Dモデル化するとき、地上型の3Dレーザースキャナーだと屋根を完全に計測することが難しい。そこで札幌市の岩崎は、ドローン(無人機)による空撮写真から建物の屋根を計測・点群化し、3Dレーザースキャナーで計測した壁面部と合成することに成功した。同社はこの技術を使って、札幌市内の屋外博物館「北海道開拓の村」の一部を3Dモデル化した。

 図面が残っていない建物を3Dモデル化するとき、3Dレーザースキャナーで建物の内外を計測し、表面形状を無数の3次元座標点の集合体である「点群データ」として記録する方法がよく用いられる。

 ただ、3Dレーザースキャナーは地上から計測するため、屋根の一部は死角となって計測されないことが多い。

3Dレーザースキャナーで計測した建物の点群データの例。屋根の一部が死角となって記録されていない。札幌市中央区に保存されている豊平館(資料:岩崎)
3Dレーザースキャナーで計測した建物の点群データの例。屋根の一部が死角となって記録されていない。札幌市中央区に保存されている豊平館(資料:岩崎)
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ドローンと3Dレーザースキャナーを併用

 この問題を解決するため、札幌市中央区の岩崎は、ドローンと3Dレーザースキャナーを併用して、屋根と外壁を完全に再現した3Dモデルの作成にチャレンジした。

 その舞台は、札幌市厚別区にある屋外博物館「北海道開拓の村」(施設設置者:北海道、指定管理者:北海道歴史文化財団。以下、開拓の村)だ。ここには札幌駅の前身である「旧札幌停車場」や、昔の北海道庁である「旧開拓使札幌本庁舎」など、北海道開拓時代の重要な文化財が移設、保存されている。

 開拓の村に保存されている建物には、移築されて30年以上が経過したものもある。図面がないものも多く、今後の補修には建物の図面などが必要だった。

 また、身障者は施設の中まで詳しく見られない場合もあるので、将来的には内部をバーチャルに見学できるようにしたいという要望もあった。

 こうした目的のため、開拓の村と岩崎は、54万2000m2におよぶ全体のうち、建物から敷地までを含めた敷地面積3万m2、点群総数4億5000万点におよぶ点群データ作成を試みたのだ。

 岩崎は、まず、点群データを作成する区域でドローンを飛行させ、高度100mから路面や地面、建物の屋根面を空撮した。

ドローンによる空撮作業(写真:岩崎)
ドローンによる空撮作業(写真:岩崎)
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ドローンの飛行ルート(資料:岩崎)
ドローンの飛行ルート(資料:岩崎)
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ドローンによる空撮写真(写真:岩崎)
ドローンによる空撮写真(写真:岩崎)
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