実際の現場を3Dでモデル化して、設計や維持管理の元データとして使ったり、様々な角度から見たりできるシステムが続々と登場している。その用途は設計から解析、施工管理や維持管理まで広がっている。現場最前線での活用を狙った最近の3Dシステムを見てみよう。

VRによる安全管理(一二三北路)
ゴーグル型ディスプレーで仮設の安全管理

 大規模な仮設や重機を使う土木工事では、工程の進ちょくに応じて日々変化する現場状況をイメージしながら、工程管理や安全管理などを行っていく必要がある。

 札幌市の建設会社、一二三北路(ひふみきたみち)は同市南区の定山渓温泉で施工中の水管橋新設工事で、大規模な足場を組んだ。

 この現場の状況をあらゆる角度から事前に確認し、"フロントローディング"で問題点を事前に解決するため、現場の地形や足場、重機などの現場全体を3Dでモデル化した。

定山渓温泉で行われている水管橋の工事(写真:一二三北路)
定山渓温泉で行われている水管橋の工事(写真:一二三北路)
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3Dモデル化された現場(資料:一二三北路)
3Dモデル化された現場(資料:一二三北路)
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 一二三北路ではさらに、この3Dモデルを見るために、ゴーグル型のヘッドマウントディスプレー「Oculus(オキュラス)」を導入した。

 Oculusには重力センサーなどが付いており、VRを見ている人が頭を上下や左右に向きを変えると、画面の角度も同じように変わる。

 現場では、作業を担当する職人がOculusを着けて現場内を様々な角度で見回し、危険個所や危険作業がないかを作業前に確認している。

 Oculusの導入により、3Dモデルはあたかも、目の前に現場があるかのように見えるバーチャルリアリティー(VR)の域まで達した。

「Oculus」でこのVRを見ることでさらに臨場感が高まる(写真:一二三北路)
「Oculus」でこのVRを見ることでさらに臨場感が高まる(写真:一二三北路)
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現場を見上げたところ(資料:一二三北路)
現場を見上げたところ(資料:一二三北路)
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実際の足場はこんな感じで迫力満点だ(写真:一二三北路)
実際の足場はこんな感じで迫力満点だ(写真:一二三北路)
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 視点の移動は自由自在だ。足場の下から内部をチェックしたり、上空から見下ろしたりと、まさにあらゆる角度から現場をチェックできる。

 また、施工段階に応じて水管橋の架設状態を変えたり、クレーンでの架設作業を再現したりすることも可能だ。

後ろを振り返ったとき(左)と横を向いたとき(右)には、それぞれの方向にあるものが見える(資料:一二三北路)
後ろを振り返ったとき(左)と横を向いたとき(右)には、それぞれの方向にあるものが見える(資料:一二三北路)
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上空からクレーンによる架設作業を確認(資料:一二三北路)
上空からクレーンによる架設作業を確認(資料:一二三北路)
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足場の下に入って細部をチェック(資料:一二三北路)
足場の下に入って細部をチェック(資料:一二三北路)
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 VRの作成には、ゲーム開発ソフト「Unity」を使う。設計に使うBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)用のソフトだと、データが重くなるため、Oculusの動きにスムーズに追従できないためだ。VRの制作作業は岩崎(札幌市)が協力した。

 このVRシステムは工事関係者の間で話題となり、一二三北路の熊谷一男代表取締役は「毎週2組くらいが現場見学に訪れる」と語る。

 VRやヘッドマウントディスプレーなどの導入で、土木工事のイメージも、大きく変わりそうだ。