長野県飯田市にある小林コンサルタントは、ドローン、地上型3Dレーザースキャナー、そしてモービル・マッピングシステムを組み合わせて、現場条件や使用目的に応じた点群データの作成を行っている。そのノウハウを同社3D計測チームの田嶋誠司氏が惜しげもなく公開した。

 7機のドローン(UAV、無人機)、4台の3Dレーザースキャナー、そして3台の車載型「モービル・マッピングシステム」(以下、MMS)と様々な点群処理ソフト――。長野県飯田市に本拠を置く小林コンサルタントは、これらの機材やソフトをフルに活用して3Dの点群データを作成し、地形の計測から工事の出来形管理、文化財のデータ記録など、様々な業務に活用している。

●小林コンサルタントが保有する機材 ●小林コンサルタントが保有するソフト
3Dレーザースキャナー 点群処理ソフト
・GLS-1000 ・Scan Master
・GLS-1500 ・Image Master
・GLS-2000 ・SCENE
・FAROFocus3D120 ・Pointools Edit
MMS ・Rhinoceros
・IP-S2(Lite/Lite-Plus) ・LandForms
・IP-S2Standard+ ・TREND-POINT
・IP-S3HD1 ・PET’s
空撮機材 写真測量ソフト
・UAV7機 ・Image Master
・Photo Scan
3Dソフト
・AutoCAD Civil3D
・TREND-CORE
MMS関連
・MMS点群処理ソフト
・MMS画像処理ソフト

 同社が2008年以降、手がけた点群データ作成業務の中では、地上型レーザースキャナーを使う業務が71%を占めていたが、2014年度の実績では地上型の割合が64%に減り、代わりにMMSやドローンを使う割合が増えている。

小林コンサルタントにおける点群作成業務の内訳(図中UAV=ドローンのこと)(資料:小林コンサルタント)
小林コンサルタントにおける点群作成業務の内訳(図中UAV=ドローンのこと)(資料:小林コンサルタント)
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 これらのシステムをどう使い分けるのか、建設業界関係者が頭を悩ませているテーマに違いない。同社技術部空間情報事業課3Dチーム主任の田嶋誠司氏は、9月10日に東京で開催されたセミナー「3Dデータ活用 本格時代到来」(主催:トプコンソキア ポジショニングジャパン)で、自社の事例やノウハウを惜しみなく紹介した。

講演する小林コンサルタント技術部空間情報事業課3Dチーム主任の田嶋誠司氏(写真:家入龍太)
講演する小林コンサルタント技術部空間情報事業課3Dチーム主任の田嶋誠司氏(写真:家入龍太)
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事例(1)ダムのたい積土量を算出
昭和40年代の紙図面と点群データを比較

 ダム湖の底には、年々、土砂がたい積し、貯水容量が少なくなっていく。まずは、昭和40年代に完成したダム湖のたい積土量を算出した事例だ。

 ダム完成当時の点群データはもちろんない。そこで完成当時のダム湖の3Dモデルを作るため、当時の紙図面を電子化し、等高線を手がかりに3Dサーフェスモデルを作成した。

ダム完成当時の紙図面(左)をもとに作成した3Dサーフェスモデル(右)(資料:小林コンサルタント)
ダム完成当時の紙図面(左)をもとに作成した3Dサーフェスモデル(右)(資料:小林コンサルタント)
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 そして現在のダム湖形状は、ダム湖の水位が下がったときに2台の地上型3Dレーザースキャナー(トプコンのGLS-1500とFAROのFocus3D)によって点群を計測した。現場計測の面積は8万8000m2で作業に1.5日、点群データの作成まで1日かかった。

3Dレーザースキャナーによる現場計測(写真:小林コンサルタント)
3Dレーザースキャナーによる現場計測(写真:小林コンサルタント)
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ダム湖の点群データ(資料:小林コンサルタント)
ダム湖の点群データ(資料:小林コンサルタント)
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 そして、紙図面をもとに作った3Dサーフェスモデルと点群データを土量計算用のソフトに読み込んで比較したのだ。

 その結果、たい積土量は「盛り土量」、浸食された部分は「切り土量」として算出することができた。紙図面をもとに作成した3Dサーフェスモデルは、3Dレーザースキャナーで計測した点群とうまくマッチさせることができたという。

2つの点群データを比較して計算したたい積土量と浸食土量(資料:小林コンサルタント)
2つの点群データを比較して計算したたい積土量と浸食土量(資料:小林コンサルタント)
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