T-Mark Navi(大成建設)
メガネ型端末で両手が使える墨出し作業を実現

 現場に図面上の位置を落とし込む墨出し作業と言えば、これまではトータルステーション側に1人、現場の測定点側に1人の計2人1組での作業が一般的だった。

 トータルステーション側の人が「もっと後ろ」「ちょっと右」などと、測定点側の人に声をかけながら、ピタッと合ったところでは「よし、そこ」というように、少しずつ位置を調整する地道な作業が必要だったのだ。

 この墨出し作業を効率化するため、大成建設は墨出し測量ナビゲーションシステム「T-Mark Navi」を開発した。

 トータルステーションの代わりに無人の墨出し専用の測量機器を使い、測点側はスマートフォンと無線LANでこの機器に接続して遠隔操作を行う。そのため、これまで2人1組で行っていた作業が、たった1人でできるようになった。

 こうしたシステムは前出の快測ナビなど、これまでも開発されてきたが、ユニークなのは作業者が情報を見るのに使うモニター画面をとして、メガネ型のウェアラブル端末を使ったことだ。

 通常のメガネと同じようにこの端末をかけるだけで、両手は完全にフリーのまま墨出しする位置をビジュアルかつスピーディーに探し出せるのだ。そのため作業性はとても高そうだ。

メガネ型ウェアラブル端末の装着イメージ(大成建設)
メガネ型ウェアラブル端末の装着イメージ(大成建設)
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 この端末を装着すると、次の墨出し点が1m以上離れている場合、測定点側の人の目には赤い矢印と「測点まで右へ1.931m移動」といった表示が見える。そのため、目標とする位置が現在位置からどの方向にどれだけ離れているのかがスピーディーに分かる。

 測点まで10cm以内に近づいたときは十字線形のターゲット画面に切り替わり、「右へ0.021m移動」といった、さらに細かい指示が出る。

 そして、ついに測点と合ったときはターゲットの色が赤から緑色に変わるとともに、音声で測点が決定したことを知らせてくれる。

 SF映画などでは、主人公のロボットの視界に、目標物の位置を案内するナビゲーション画面が重なって敵を探すシーンがよく出てくるが、それと同じような気分で墨出し位置を探せそうだ。

 墨出し位置までたどり着いたら、ひと声「位置決定」などと叫ぶと、それを合図に測点位置が記録される。

メガネ型ウェアラブル端末で見える測点誘導用の画面
メガネ型ウェアラブル端末で見える測点誘導用の画面
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これまで2人1組で行っていた作業が、1人で行える(資料:大成建設)
これまで2人1組で行っていた作業が、1人で行える(資料:大成建設)
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 大成建設では、測点約30カ所の測量実証試験でこのシステムを使ったところ、作業員2人で1時間かかっていた作業が、作業員1人で40分という短時間で完了することが確認できたという。そして、現在は同社の数カ所の現場で運用を始めている。

 今後は複雑な曲面部分の部材取り付けの精度向上や、測量記録データの自動帳票化などの機能拡張を図るほか、さらなる測量作業の効率化、省力化を目指していく予定だ。