離陸前の最終チェックには指先の感覚も
離陸前の準備が完了し、後はスイッチを入れるだけ、という状態になっても河手氏のチェックは続く。
プロペラを手回ししてベアリングに異物が詰まっていないかを確認したり、操縦に使うプロボのスロットルやスイッチの位置、ケーブルの接続状態などについて、マニュアル通りかどうかを確認したりしていくのだ。
「ベアリングに砂鉄がはさまっていたときには、即座にモーターを交換します」と河手氏は説明する。
これらの手順は「飛行前安全確認書」に従って1つ1つ丁寧に行っていった。実物の軽飛行機でも「プレフライトチェック」「ビフォー・エンジンスタート」「ビフォー・テークオフ」などのチェックリストに従って、パイロットが機体の各部を点検する。点検項目の数こそ違うが、軽飛行機と全く同じ安全確認の手順といってよいだろう。
こうして入念な準備やチェックを行った後、パイロットはプロポを持ってようやくドローンのそばに寄った。そして4つのローターを回転させて異常音などがないかを最終チェックした。
こうした準備の後、ドローンはついに離陸した。そしてゆっくり上昇し、道路工事の現場上空に沿って飛んでいった。ここからは自動制御モードで、入力した飛行ルートから逸脱しないように飛んでいく。
そして杭打ち機の手前で引き返し、戻ってきた。最後の着陸は手動モードに切り替えて、パイロットが慎重に行う。
ドローンの飛行時間はわずか2分弱だったが、離陸前の準備には様々な測定機器や制御システムを使って約1時間を費やしての作業を行った。
ドローンを現場に持って行くと、すぐに飛ばしたくなるのが人情だが、一見、面倒なチェックを離陸前にあせらず地道に行うことが、安全飛行を実現するための第一歩と感じた。
ドローンを様々な業種で有効活用するためには、墜落事故の危険性をいかに少なくするかがポイントだ。建設業界では、このようにドローンの安全飛行を工事現場で既に実践している。この飛行マナーの遵守を、他業種に先駆けてリードしていくべきでないだろうか。
こうした取り組みは、建設業界への評価を高めるものになるに違いない。