跳ね出し床を持ったユニークな外観

 同社が施工中のDUOは、約2万4000m2の敷地に建つ高さ181mのオフィス棟と、186mの住居棟からなり、総施工床面積は約24万m2にも及ぶ。各棟の上階部分は、それぞれ21mと10m、空中に突き出した跳ね出し床となっている。

 「非対称な形状のため、50年後に建物上階での水平変位を規定許容値以下にコントロールすることが求められた。長期的な床レベルや外装カーテンウオールへの影響、エレベーターシャフトの変形による運行障害が強く懸念されたためだ」と岡野所長は説明する。「その後、社内で詳細に解析・検討、変位を規定許容値以下まで抑えられることが確認でき、これまでの経過では、実際の変形はさらに大きく下回っている」(同)。

 跳ね出し床分の施工は、跳ね出しの長さが大きいオフィス棟については下から仮設ベント柱で支えながら施工した。工期や安全性、精度、コストの各方面から検討した結果、この方法が最も合理的と判断したからだ。

長さ19mの跳ね出し床を持つオフィス棟(左)。その張り出し床の最上部には2フロアにまたがる「メガトラス」と呼ばれる鉄骨構造(右)が組み込まれている(写真:家入龍太)
長さ19mの跳ね出し床を持つオフィス棟(左)。その張り出し床の最上部には2フロアにまたがる「メガトラス」と呼ばれる鉄骨構造(右)が組み込まれている(写真:家入龍太)
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 一方、住居棟の張り出し床は下部を仮設トラス、上部をコア部からの仮設鉛直ブレースで支えながら施工を進めた。特に仮設鉛直ブレースは、本体のフロアを貫通し、上部の荷重を支える重要な仮設材なので、納まりと施工手順を詳細にBIMでモデル化し、4Dによる施工シミュレーションを入念に行った。

 現場の作業を支えるのは、5基のタワークレーンだ。所長以下、総勢135人の社員が現場に常駐し、プロジェクト全体の運営を担っている。エレベーターなどを収めた「コア部」を、上昇機構付きのスライド式型枠によって先にコンクリートを打設して立ち上げ、それを追うようにフロアが施工されていく。1週間で1フロアが完成するペースだ。

跳ね出し床を支える仮設トラスと鉛直ブレースのBIMモデル(左)と実際の施工風景(右)(資料・写真:大林組)
跳ね出し床を支える仮設トラスと鉛直ブレースのBIMモデル(左)と実際の施工風景(右)(資料・写真:大林組)
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住居棟の跳ね出し床部分の施工手順(資料:大林組)
住居棟の跳ね出し床部分の施工手順(資料:大林組)
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