シミュレーションに力を入れた国立伝染病センター
現在、基礎工事が進んでいる国立伝染病センターの建設プロジェクトでは、施主から要求されたのは施工モデルと竣工モデル、FMモデルだ。さらに施工の品質保証をBIMで実行するための実施計画の作成なども求められた。
「契約書にはFMで使われるOmniClassやCOBieなどの用語が並び、BIMモデルからFM用のデータベースが作れるように、属性情報の入力方法について具体的な指示があった」とKOAのディレクター、安田裕気郎氏は語る。
「例えば、属性情報については設備機器のメンテナンスや交換時期、メーカーへの連絡がすぐに行えるようにするための20項目の基本情報に加え、設備の種類によっては運用・維持管理マニュアルやスペアパーツと連携した属性も必要に応じて入れることを、施主から求められた。FMでは建築部分よりも設備の方が重要だ」(安田氏)。
KOAはその前に行ったプロジェクトの経験をフィードバックし、さらに自主的なBIM活用を広げた。施工図作成のほか、躯体や狭い場所での設備の施工シミュレーションや上部空間・天井内スペースのチェック、さらには3Dプリンターによる施工検討や法規チェックまで、現場での施工前に、細部まで施工方法や法規との適合性をBIMモデルで確認しているのだ。
このプロジェクトは、天井と躯体の間が狭い部分がある。勾配のある通路とエスカレーターが交錯する部分の空間を、スムーズに通行できるかなどの検討にBIMモデルを使った。
シンガポールの建物は、一般的に天井と躯体との間が狭い。その間の空間に施工する空調・衛生・電気などの設備は、3Dで納まりを確認しておくのはもちろん、施工可能な取り付け順序もよく検討し、作業員に分かりやすく伝えることも重要だ。
「ダクトのフランジを締め付けるときに、ボルトを締める作業員の手が入らない場合もあるので、入念に確認しておく必要がある」と安田氏は言う。
BIMモデルで天井の高さなど設計与条件での納まりを確認し、施工が不可能な場合は、そのBIMモデルを施主や設計事務所に示して説明し、解決策を検討することになる。分かりやすいBIMモデルを使うことによって、こうした問題も以前よりスムーズに解決するようになった。