2800カ所の鉄骨加工をノーミスで施工
ビルの構造や設備の施工も、BIMモデルによる干渉チェックによって、図面チェックの時間が大幅に短縮された。従来の紙図面と比べて、構造と設備の調整に要する時間は1フロア当たり少なくとも17%は削減されたと石澤氏らは見ている。
また、干渉自体を発生させないようにするため、スペースごとに配管やダクトの優先順位を決めて配置することにより、そうでない場合に比べて初期段階から90%以上の干渉を避けることができた。
圧巻は37階の機械室だ。「設備の防振架台などを設置するため、工場製作の段階で鉄骨に約2800カ所の穴を加工した結果、現場の据え付け時にエラーは1つもなかった」(石澤氏)という。
作業員は、紙の図面に基づいて施工するが、図面にも3Dモデルを挿入することで、分かりやすくした。これも作業ミスの防止に役立った。
施工の検討には、BIMモデルを使って施工管理を行える「VICO Office」というソフトを導入したほか、iPadにBIMモデルを入れて持ち歩き、現場で実物と比較しながら進ちょく管理を行った。
そして現場で3Dレーザースキャナーによる点群計測を行い、BIMモデルと点群データを比較することで、設計通りの施工ができているかどうかの確認も行った。
メーンのBIMソフトは、オートデスクの「Revit」を使ったが、そのBIMモデルをIFCなどのデータによって多数のソフトと連携させながら、様々な検討に活用したのだ。
BIMの活用例はまだまだある。例えば、火災時などの避難シミュレーションを「Sim Tread」というソフトで行い、その結果をゲーム開発などに使われる「Unity」というソフトでリアルに可視化したり、高さ15mのロビー上部に設置する監視カメラを設置する際に、カメラからの画角や、カメラ自体の見え方をBIMソフト「Navisworks」で確認したりした。