HMDの低価格化で一般に広まるVR
VRはこれまで、床から壁、天井までをカバーするスクリーンと、複数のプロジェクターを使う大規模なシステムが作られ、街並みの検討やクルマ、機械の設計などに使われてきた。当然、高価でプロ用のツールだった。
ところが最近、低価格で小型のHMDが市販され、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)や3Dデザインソフトで作成した3DモデルをVR用に変換するソフトも販売され始めた。
例えば、HMDでは前述の「Oculus」や「GearVR」などのほか、スマートフォンを段ボール製のメガネ型ケースに収めてHMDとして使う低価格の「ハコスコ」なども登場している。
ソフトでは、TISが住宅デザインソフト「3Dマイホームデザイナー」で作った3DモデルをVRとして見られるようにする「VR内装体験システム」を発売しているほか、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフト対応のVR化システムも発売されている。
また、リコーは同社の小型の全天球カメラ「THETA」で撮影した写真をHMDで見るソフト「RICOH THETA S for iPhone」や「RICOH THETA S for Android」などを無料で公開している。
これらを使うと、大規模なスクリーンなどの設備を設けなくても、小型のHMDやスマホさえあれば、同様に上下左右をぐるりと見回せるVRシステムを作ることが可能だ。
BIMや現場写真を活用したVR展開を
建設業界では、BIMモデルや現場写真の活用はこれまで、設計や施工、維持管理用のものという“業界の中”にとどまっていた。
しかし、人間の活動の多くは建物の内外で行われ、その空間をVRとして再現するニーズは、不動産業界から婚礼市場、さらには旅行や教育などこれから大きく広がると見込まれる。
BIMモデルや現場写真も、こうしたVRに欠かせない重要なコンテンツになりそうだ。「VR元年」と言われる今年、建設業が得意とする建物や街並みのコンテンツを、VRに載せて新しい顧客や製品・サービスの提供に生かす新ビジネスチャンスがあふれていそうだ。