今後15年間に毎日10万軒以上の住宅ニーズが

 3Dプリンターで作った住宅に対するニーズはどれだけあるのだろうか。例えば、年間3000ドル以下で暮らす40億人以上の人たちがいる。このニーズ満たすためには、国連は今後15年間以上にわたり、平均して毎日10万軒以上の住宅を建てる必要があるとしている。

 この40億人以上の人たちの多くは年収の10%以上は住宅に使えない。低価格で一定の品質を満たした住宅に対するニーズは、今後、急激に上がっていくと予想されている。

 さらに増加する世界人口によって、気象条件が厳しい場所や社会経済が緊張した場所においても、住宅に対するニーズは増え続けると予想されている。

 WASP社はバランスを欠いた地球上の開発行為によってこうした住宅ニーズを満たすのは非現実的と感じている。それよりも、社会全体の特性を考慮して、より質素で柔軟な計画を行う方が現実的と見ている。3Dプリンター技術は、人間の主要なニーズを持続可能な開発モデルの中で満たせるようにできる。そんな期待ができるとしている。

現地の材料を使った持続可能な住宅建設を目指すビッグ・デルタ(写真:WASP)
現地の材料を使った持続可能な住宅建設を目指すビッグ・デルタ(写真:WASP)
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 物資があふれた日本で暮らしていると、災害時の仮設住宅など緊急時でもプレハブ住宅を建てるのが当たり前に感じてしまう。海外の住宅不足もプレハブ化で解決した方が効率的ではないかという考え方もあるだろう。

 しかし、世界には生産や物流のインフラがなく、住宅に使う鋼材やセメントなどの素材でさえも入手が難しい地域が多くある。

 その点、3Dプリンターは様々な現地発生材を臨機応変に使い、効率的に住宅建設を行うことができる。世界が今後、直面する住宅不足という問題を解決する有効な手段になりそうだ。

家入龍太(いえいり・りょうた)
家入龍太(いえいり・りょうた) 1985年、京都大学大学院を修了し日本鋼管(現・JFE)入社。1989年、日経BP社に入社。 日経コンストラクション副編集長やケンプラッツ初代編集長などを務め、2010年、フリーランスの建設ITジャーナリストに。 IT活用による建設産業の成長戦略を追求している。 公式ブログ「建設ITワールド」(http://www.ieiri-lab.jp/)を運営。 著書に「CIMが2時間でわかる本」(日経BP社)、「図解入門 よくわかるBIMの基本と仕組み」(秀和システム)など。