30年前と変わらぬ生産性

 2012年に中央自動車道笹子トンネルで起こった天井版崩落事故が契機となり、インフラの老朽化問題に社会の関心が集まるようになった。老朽化した施設は、着実かつ急速に増えていく。

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 だからこそ、大量の施設を高速で点検できるような手立てが必要になっている。大きな期待を寄せられているのが、センシングやモニタリングをはじめとした新技術の導入だ。

 少子高齢化に呼応するように、建設労働者の高齢化も深刻な状況にある。熱中症や作業中の事故といった労災リスクも高まっているのだ。

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 若手の入職が十分に進んでいない状況もあり、今後は女性の活用をはじめ、新しい力を入れていくための工夫も重要になる。

 経験の浅い人材や女性の活用を促すうえでも、安全かつ快適に仕事を進められるようなロボットやウエアラブルデバイスといった支援ツールの力は、これから重要性を増すはずだ。

 ロボットなどの導入によってもう一つ期待されているのは、建設現場における生産性の向上だ。土工事やコンクリート工事の分野では、約30年前と必要な作業員の数が変わっていない工種も少なくない。

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 政府の未来投資会議は16年9月、建設現場の生産性を25年までに20%高めるという目標を打ち出した。生産性が向上すればその分、労働者への報酬を増やしたり、長時間労働を防いだりできるようになる。仕事としての魅力を高めることにつながるはずだ。建設産業が新しい人材の育成を図っていくうえでも重要な取り組みとなる。