今を時めく大ヒット映画「君の名は。」の新海誠監督の名は、これまで一度だけ日経コンストラクションの誌面に出たことがある。かつて手がけた大成建設のCMについて、2013年5月13日号の記事で触れたためだ。その記事を担当した筆者は、光を繊細に描く映像美を記憶していた。
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あのような映像が2時間近く続くのかと興味を覚えて「君の名は。」を見に行くと、土木や建築の一般社会でのイメージについて、予想以上に考えさせる内容だった。この映画の主要な支持者である若者のなかには、もしかすると見た後で、主人公の一人の男子高校生、立花瀧と同様に建築業界を志す人がいるかもしれない。一方、土木を志すことは決してありえないのではないか。そんなことを思った。
*以下、「君の名は。」の内容に関する記述が含まれています。
作品の舞台は、瀧が住んでいる東京と、もう一人の主人公の女子高校生・宮水三葉が暮らしている岐阜県北部にある架空の「糸守町」だ。三葉にとって東京は憧れの対象という設定なので、新宿区西新宿の超高層ビル街、JR新宿駅南口界隈といった巨大建築群を中心に、実景以上に華麗で光に満ちあふれた美観として描いている。映画の終盤に瀧が就職活動で建築業界を志望することと相まってか、建築に関しては描き方が極めて肯定的であるように思われた。